LOGINこの世界には悪魔がいました。
悪魔は夜にしか活動出来ないが生まれつき力が強く、人の心臓または目を好んで毎晩人を襲いました。 そんなある日1人の男が悪魔をこらしめました。 その男はこの国の王子様…否 この世で一番、悪魔に近くそして心無い男だった。 「…!はぁ…はぁ……何、今の夢。」 確か小さい頃読んでた絵本の内容だったけどすごく怖かったような… 「おはよぅ…」 「おはようミーナ。もう体大丈夫なの?」 「体?そういえば私、気絶してしまったんだね。全然覚えてないな」 昨日玄関前で気絶してからミーナの母親はミーナを家の中まで運びベットに寝かせたのだった。 一度目を覚ましたが疲れがたまっていたのかすぐに寝てしまったらしい。 ミーナは朝起きてから学校に行く準備をし、朝ごはんを食べ家を出た。 「行ってきます…」 「行ってらっしゃい。…どうしたのミーナ?元気ないわよ?」 「そ、そんなことないよ!じゃ、行ってきまーす!」 ミーナは昨日殺された友達は絶対来ないものだと思うと不安で仕方なかった。 まだ17歳のミーナには辛くそして悲しい現実だった。 学校に着いてクラスに行っても案の定友達の席には誰も座っていない。 やっぱりあの時… キーンコーンカーンコーン 「はーい、じゃあ席につきなさーい」 私がカバンから教科書を机に移してるとタイミングよくチャイムがなりそれと同時に担任の先生が入ってくる。 「はい、それでは朝のホームルームから始めたいと思うのですが…その前に皆さんに大切な話があります。」 すると先生の顔がいかにも深刻そうな顔に変わった。 きっと友達の事だろうなぁ。 「…実は今日3人ほど学校に来ていませんが昨夜その親御さんから行方不明の連絡がありました。」 やっぱりシェスカ達の事だったんだ… ミーナはそう思うととても心が痛かった。 別にミーナが悪いわけではないが自分だけが生き延びて学校に来てるのはおかしいと思ったからです。 「確かシェスカさん達はミーナとよく一緒にいましたが…何か心当たりはありますか?」 「……」 「ミーナ…さん?」 「実は…シェスカ達は…」 ガラッ ミーナが言おうとした時、急に教室の扉が開いた。 扉を開けた人物にミーナは目を疑った。 それは昨日目の前で殺されたはずの… 「…!シェスカ!エミー!イルミ!…え、どうして…」 「ごめんね、ミーナ。ちょっと寝坊しちゃった。」 「先生ごめんなさーい!」 「とりあえず遅刻届出したんで座っても大丈夫ですかー?」 「全く三人とも…後で職員室まで来なさいよ!」 「「「はーーい!」」」 そう言って三人は自分たちの席に座りカバンの中から教科書類を移し始めた。 ミーナは三人が生きていた事に嬉しくて泣いていた。 良かった…本当に良かった…。あの時死んだと思ってた…。 「はい、ミーナさん!何があったのか分かりませんが泣かないの! はい、ホームルームを始めるわよ!」 そう言って先生は5分ほどホームルームをして教室を出た。 ミーナは早く三人と喋りたくて終わってすぐに三人の机の近くまで来た。 「よかったぁー!三人とも無事で。シェスカ胸大丈夫なの?」 「え…ま、まぁ何とか大丈夫だったみたい。」 「エミーもイルミも大丈夫?」 「わ、私はほら。そんなすぐ死ぬ奴じゃないでしょ?あははは」 「運が良かったっていうか…何ていうんだろ?…まあそんな事いいじゃない!」 「なんかみんなよそよそしぃ!ねえねえ、今日もいつものとこに遊びにいこーよ!」 「遊ぶ?…あー、いつものとこね!分かったわ!」 「やったぁー!あ、その前にちょっと私トイレ行ってくるー!」 ミーナがトイレに行くと同時にチャイムがなり、ミーナはヤバイと言いながら走ってトイレに行った。 チャイムがなったことでクラスの生徒達がミーナ以外全員戻ってきた。 そして最初の授業の先生が入ってきて主席名簿を取り出した。 「ミーナはトイレか。しょうがない…。じゃああいつ抜きで出席確認をするから返事しろよ。」 先生はそれぞれの名前を読み始め、名前を呼ばれた生徒はそれに対して返事をする。 「……ニヤァ…」 「…そろそろだな。」 「お腹すいたぁー…」 授業が始まってからすぐに、シェスカとエミーとイルミが急に席を立ったので生徒達と先生は三人に注目した。 「おい、お前ら何立ってんだ!早く座らんか!」 「……」 「……」 「…ニヤァ」 嬉しい。 あの三人が生きて学校に戻ってきてくれて本当に良かった。 これでまたいつものように楽しく学校で… ミーナはお手洗いを済ませて手を洗い鼻歌を歌いながら教室に戻った。 教室につくと授業中のはずなのにドアが開いてた。 あれ?なんで開いてるんだろ? …まっ、いっか! 「先生!遅れてすいませんでし…」 「きゃぁぁあ!!!」 そこにはミーナがトイレに行ってた3分くらいの間人の血で染まっていた。 「みんな…みんな!何があったの!ねぇ?…先生!」 みんなに声をかけるが誰1人返事を返さない。 生徒達のほとんどは体の原型をとどめられないくらい八つ裂きにされていて、先生に関しては目と心臓部分を抜き取られていた。 「目と心臓が…ない……うっ…ハァ、ハァ…」 先生の死体を見てミーナは思い出した。 こんな殺し方普通の人間には出来ない。それにシェスカ達だけいないみたい。これは… ピーンポーンパーンポーン すると突然学校のアナウンスがなった。 「全校生徒の皆さんに伝えます! 今すぐ学校から逃げてくださ…グシャ!」 アナウンスの人は言い終わる直前に何かあったようだ。 するとこの階の端から叫び声が聞こえる。 「きゃぁぁ!」「助けてー!」 グシャァ!!! 「ひっ…ひっ…」 ミーナは今度は自分の番だと思い、学校の外を目指して走った。 (殺される!逃げなきゃ殺される!) 「どこ行くの?ミーナ?」 するとその前にはさっき教室にいなかったシェスカが手を後ろに組んで立っていた。 「…シェスカ……」 「どこ行くのミーナ?」 シェスカは腕を後ろに組んだまま笑顔でこっちに近づいてくる。 まるで腕を隠しているようだった。 「どうしたの、ミーナ?なんでそんなに汗かいてるの?」 「…あなた、誰?」 「え、シェスカよ?急にどうしたの?」 「違う!あなた…いや、他の二人も…あなた達一体、何者なの?」 「……」 「答えて!本物のシェスカは…エミーやイルミはどこ行ったの!?ねぇ!」 ミーナの問に答えようとしないシェスカ。 するとシェスカの後ろから声が聞こえた。 「あー、おいしかった…ジュルッ…」 「お腹もだいぶ落ち着いたって感じ♪」 「エミー!イルミ!…その手はもしかして…」 後ろから現れたエミーとイルミの手は人の血で真っ赤になっていて、エミーは血の付いた手をおいしそうに舐めていた。 「あれ、あんなところに餌(人間)が残ってるー!」 「ほんとだ!シェスカ、食べてもいいよね?」 するとさっきまで黙っていたシェスカはニヤリと笑い、そして。 「…あぁ、いいでしょう…。血の一滴残さずにね。」 「シェスカ…エミー…イルミ…。やっぱりあなた達…」 「悪いわね、ミーナ。私たちはもう人ではないの。だから正直あなたの事なんてどうでもいいから…死んで?」 「うっ…うっ…」 ミーナは絶望のあまりその場に立ち崩れてしまった。 まさか自分の友達が悪魔になってしかも学校の人たちを殺しているのだから。 (悪魔は…死んだ人間にまで絶望を与えるの?…シェスカ達がそんな事思うわけない。) 「あははは!安心して!私が食べてあげるからぁ~!!」 エミーが最後に言うとエミーの体が昨日の化け物のような姿に変わりミーナを襲った。 グシャァァ!! 「!?ガァァぁぁああ!!」 「…あれ?私死んで…」 襲われたミーナは無傷で代わりに襲ってきた悪魔のエミーが胸を大剣で刺されていた。 「…何者だ、貴様!」 そこには昨日ミーナを助けた黒いローブの男が大剣を持って立っていた。 「あ、あなたは昨日の…」 「…こんな時間に活動する悪魔がいるとは…」 あの時は夜だったため顔がよく分からなかったが今はローブについてるフードを被っていて顔が見えなかった。 するとさっきまで胸を刺されてもがいてたエミーは次第に胸の傷が再生して立ち上がり、ローブの男を睨みつけた。 「殺してやる!殺して…コロシテ…ヤル!」 するとエミーの身体はさっきよりも化け物みたいな姿に変わっていった。 その姿は例えるなら悪魔というより二本足で立っている狼のようだった。 そしてエミーは一瞬で男に迫り、爪を連続で繰り出した。 しかし、ローブの男はその攻撃を息一つ切らすことなく全て大剣で防いだ。 「エグッテヤル!…エグル…エグル!!」 エミーが激しく攻撃してもローブの男にダメージを与えることはできず、これ以上やってもラチがあかないローブの男はエミーを大剣で吹き飛ばした。 吹き飛ばしたその隙に左手で空間に穴を空けて、ローブの男はその穴をくぐり抜けその場から消えた。 「…ドコダ…ドコイッタ…。出テ来イ!…エグッテヤr…ガハァ!」 突然エミーの背後から現れたローブの男は隙だらけのエミーの背後を大剣で縦に切りつけ、エミーは血を吐きながらその場に倒れてしまった。 「エミーーー!!!」 悪魔の姿になっても友達だったエミーを2度も殺される所をミーナは涙をボロボロ流しながらそれを見るしか出来なかった。 「頭の悪い悪魔はやり易い。…次はどっちだ…かかってこい。」 「てめぇ!エミーをよくもっ!」 「やめな、イルミ。仲間を殺されて悲しむなど愚かな人間のやることだ。」 今度はイルミが姿を変えようとしていたが、シェスカはそれを止める。 そしてシェスカはローブの男に質問した。 「貴様は何者だ?その魔力からして人間ではないのは確かだが悪魔でもないな。」 するとローブの男は大剣を下ろすと被っていたフードを脱ぎながら答える。 「…お前らのように人を喰らう存在がいれば、その悪魔を喰らう存在もいる。」 「悪魔を…喰らう存在?」 フードを脱ぐと男の髪と瞳は炎のように真っ赤に染まっていた。 「俺は貴様ら悪魔を食い殺すために自ら悪魔と取引し、力を手に入れた。名はない。だが周りは俺をこう呼ぶ。」 「紅の悪魔祓い、グレン。」 そう言うとグレンと名乗った男は着ていたローブを脱ぎ捨て、大剣を構えた。 「紅の…悪魔祓い…なるほど、通りでエミーを一瞬で殺せたのか。しかし悪魔祓いが本当にいるとはな。」 (しかし、悪魔祓いの奴がなぜここに?それになぜ他の生徒は助けずにミーナだけを助けるんだ?) シェスカが考えているとグレンは大剣を構えて迫ってきた。 それをイルミが爪で防御し大剣を止めた。 「いきなりシェスカはないでしょ?悪魔祓い…さん!!」 イルミは最後の語尾だけ強く言い、大剣をはじいた。 「あははは!エミーを殺したからって調子乗らないでね!今からあなたを綺麗に串刺しにしてやるから!」 するとイルミの両手の爪はゴムのように伸び縮みし、伸びた爪でグレンを襲う。 グレンはローブを脱いだのか動きが早くなり、余裕の表情で大剣を使って防ぐ。 「余裕ぶってんのも今の内よ!ほらっ!」 イルミが言うと一本の爪が大剣を滑るようにかわし、そのままグレンの腕をかすった。 他の爪も同様、次第に大剣を滑るようにかわしてかすり出す。 「ほらほらぁ~!どんどん当たってきてるわよぉ?疲れちゃったの?」 グレンはまるで軟体動物の触手みたいにグニャグニャする爪に苦戦していた。 グレンは左横に空間の穴を空けて再びイルミの背後を狙おうとした。 だが、動きを読まれていたのかイルミは伸びた爪を引っ張ってきて防ぐ。 「残ねぇ~ん!さっきの見て思ったんだけどあんた相手の背後狙うの好きだねぇ?」 イルミは伸び縮みを利用して横に爪を振りきった。 グレンはとっさに空間移動したが右腕だけ少し切り傷が入り、そこから血が流れていた。 「あらら~、痛そうね。てかさ、いい加減本気出したら?」 「…」 「とぼけないで。悪魔と取引きしたのにそんな弱いわけないでしょ?それとも本気の出し方を知らないの?」 イルミが言うとグレンは一回ため息をつき、そして。 「…いいだろう。少しだけ本気を出す。だが、これだけは言っておく…」 そしてグレンの立ってるところから黒い魔法陣が現れるとそこから黒い炎が発生し、その炎はグレンの身体を纏う。 「…どうなっても知らないからな…。」 グレンは黒炎を大剣に纏い、再び構えた。 「へー、さっきよりも魔力は上がったみたいね。けど炎じゃ私を倒せないわよ!」 イルミは爪を伸ばしてグレンを襲い、グレンはさっきと同じようにそれを大剣で防ごうとした。 「あははは!あなた学習能力ないわね!八つ裂きにされなさ…」 「イルミ!離れなさい!」 「えっ…きゃぁあああ!!」 イルミの爪は大剣に触れるとそこから黒炎が勢いよく燃え移り、イルミの身体を燃やした。 そしてグレンは空間移動を使ってイルミの近くまで移動し、黒炎を纏った大剣で縦に切りつけた。 グシャァッ!! 「ガァッ…!ガッ…」 「悪魔の炎は相手がチリになるまで燃え続ける漆黒の炎。お前が消えるまで炎は消えない。…これが悪魔と取引して手に入れた力だ。」 「ガァッ…ァ…ァ………」 イルミは次第に声が聞こえなくなり、そのまま黒炎によってチリになって消えてしまった。 「イル…ミ…うぐっ…」 イルミまで目の前で殺されてミーナは言葉が出なかった。 「最後はお前か…銀髪の女……いや、悪魔だな。」 グレンは大剣でシェスカを指す。 シェスカは黒炎によってチリとなったイルミを見ても表情を変えることはなく、寧ろ口角を吊り上げて不敵に笑った。 そして身体を化け物に変異し視線をグレンに向けて言った。 「あなた何か勘違いしてない?確かにあなたは強いわ、人間にしてはね。けどあなたは私には勝てない。そう、そんな悪魔の力を借りた程度じゃワタシニハ…カナワ…ナイ!…グルルルッ!」 シェスカは言葉を発するに連れて理性を保てずに獣のような唸り声を出していき、グレンを獲物と認識したかのように睨んだ。 そして一気に襲いかかり、右手の爪を上から思い切りグレンに振り下ろした。 グレンは空間移動の魔法で一瞬でその場からいなくなると一瞬でシェスカの背後に現れて横に斬る構えをとった。 しかし、シェスカはそれに気づいてたらしくすぐに判断して爪で大剣を防いだ。 そして剣ごとグレンを後方に押し飛ばした。 「オナジ…マホウ…キカナイ。グルルルッ…」 飛ばされたグレンは廊下の一番端の壁に背中から直撃し、血を吐いて片膝をついた。 「ガッ…ぐ…っぺっ!…」 「マ…ダ…マ…ダ…」 グレンが立ち上がろうとした直後、目の前には爪を引っ込めた状態で接近してきたシェスカは手を拳に変え、グレンを殴りまくった。 グレンは避けることができず只々その攻撃を受けていた。 …いや、この時は受けているように見えた。 容赦なく殴り続けるシェスカ。 通常、悪魔に1発でも殴られた人間は全身の骨が粉砕し再起不能の状態になるほど筋力が特化している。 グレンはその何倍も殴られた。 普通の人間ならまず生きることはできない。 ひとしきり殴ったシェスカは悪魔の姿から人間の姿に戻り、理性の失ってた声は落ち着きを取り戻した。 「まあ、こんだけ殴ったら普通死ぬわね。…さて、そろそろ食べさせてもらうわよ?ミーナ?」 ジュルリとヨダレの音を立て、爪を伸ばしてミーナに近づく。 ミーナは恐怖で怯え立ち上がることができず腰をつけたまま後ずさりしていく。 「あーらあら。人間って本当に愚かね。さっさと殺されたら楽になれるのにね。こいつみたいにさっさと楽になれば…」 シェスカが後ろにいたグレンを指差そうとした時、その指は急に捕まれそのまま関節の曲がらない方向にねじ曲げられた。 「ガァァァァ!!っ…なんで倒れてないの!?普通の人間なら死んでるはず…」 「普通の人間なら…だろ?」 シェスカの指をねじ曲げたのはまるでさっきのダメージを受けてないかのように涼しい顔をしたグレン。 ねじ曲げて取ったシェスカの指を黒炎を発生させてチリにした。 「なぜダメージを受けてないんだ…そんな顔してるな、クソ悪魔。」 「反(リバース)魔法ー、相手から受けた物理攻撃を吸収し自分の力に変換する。そして…」 拳を強く握りしめ、足を一歩前に出すとシェスカは反射的に一歩後ろに下がった。 「俺はお前と全力で戦ってない。」 そう言ってグレンは魔法を纏っていない右拳をシェスカの腹にぶち込んだ。 反魔法によってダメージを吸収したことによって魔法を纏ってないのにも関わらず拳から衝撃が発生しシェスカの腹はえぐれ内臓が飛び散る。 あまりの痛みにシェスカは意図せずに悪魔に変異してもがき苦しんだ。 「がっ…ガァァァァァァア!!!ああ…ァあ…」 悪魔か人間かどちらかわからない状態でもがき苦しむシェスカ。 そんなシェスカをグレンは一旦その辺に置いていた大剣を再び持って剣先でシェスカを指した。 「お前に人間として生きる道はない。とっとと死にやがれ」 剣を振り上げてシェスカの息の根を止めようとするグレン。 「やめてーー!!!」 剣を振り下ろそうとした瞬間、ミーナの叫び声によって剣の動きが止まる。 「邪魔するな、女。こいつは悪魔、殺さなければこっちが殺される。」 「分かってる…分かってるわよ、そんなこと!分かってる…。でも…その悪魔…シェスカは私の友達。どんな姿になっても…友達…友達だから!だから…シェスカを…助け…」 ミーナは涙を流しながらのため呼吸が下手になり、そうながらも友達を守るために必死で阻止しようと声を振り絞った。 しかし、グレンは表情を一切変えずに 「昨日の夜言ったはずだ。昨日の事、友達の事は忘れた方がいいと。それにこいつら悪魔は人間の心臓を食うことで新たな悪魔を生み出す。このシェスカも悪魔に身体を乗っ取られただけだ。残念だがこいつは殺す。」 そして剣を振り下ろし、シェスカからは悪魔特有の黒い血しぶきが飛び散った。 それを見てミーナは狂ったように発狂し、その場に崩れ落ちた。 グレンは大剣をポケットのような空間にしまい込みミーナに近づくとしゃがんで彼女の頭をさすりながら彼女の目を見て言った。 「悪魔は残酷だ。人間の心臓を奪って殺し、殺した死体に新たな悪魔を誕生させて他の人間の心臓を奪うという負の連鎖を繰り返す生物だ。…まずはこの学校を殺された死体ごと燃やさなければならない。出るぞ。」 グレンはミーナの頭を触りながら転移魔法で外に移動した。 外に転移したグレンとミーナは学校の入り口の前まで移動した。 グレンはミーナに側から離れろと言うとミーナはグレンから20メートルくらいまで離れ、離れたのを確認すると両手を入り口前の地面に置いた。 「ー黒炎よ、負の魂を焼き払えー」 グレンが魔法を唱えると学校を囲むような黒い魔法陣が発動し、学校の校舎は黒炎によって黒く燃え始めた。 その黒炎は普通の炎と違い、辺りに燃え広がることはなくその校舎の位置だけを燃やしていく。 「ギャァァァァ…」 殺された人間の何人かは悪魔になって復活したが、学校ごと燃やしたため中で悪魔の声らしきものが聞こえてきた。 グレンが学校を燃やしたのは一見残酷だが殺された人間が悪魔になって他の人たちを襲わせないためである。 燃えていく学校を見ながらグレンはミーナに言った。 「お前はこれを見て辛いか?」 「…辛い…でも、仕方ないよね。もし学校を燃やさなければ大量の悪魔ができちゃうもんね…」 「その通りだ。辛いと思うが今起きたこの現実を決して忘れるな。」 「…うん。」 ミーナの精神状態はもうまともで入れる状態ではなくグレンの言ってることをぼーっとしながら聞き流すようにコクっと頷いた。宝石店を出てからミーナはカレンに案内されながら色んな店に寄り、手には買った服や旅に必要な生活必需品などが入った袋を持っている。重くなった荷物を持っているミーナを見て微笑ましく思ったカレン。笑いながらミーナに声をかけた。「うふふ、いっぱい買い物できて良かったね。ミーナちゃん。」「はい!本当にありがとうございます、カレンさん。」「いいのよ。仕事の休みは私1人で買い物してるからあなたみたいな女の子と買い物できて楽しかったわ。」「えへへっ。そういえばカレンさんは何の仕事してるんですか?」「私?私は……」「おーい、カレーン!」カレンが答えようとした時、2人の後ろの方からカレンを呼ぶ声が聞こえてきた。誰だろうと振り返ると手を振りながらやってくるのは男の人だった。一瞬彼氏かなと思うミーナだが数秒後その人が誰なのか一瞬で分かった。その人とは。「え、エバルフさん!?」この人はこの前までグレンを殺そうとしていた騎士団の1人のエバルフさんだった。向こうもミーナとカレンが一緒にいる事に驚いていた。「君は、紅の悪魔祓いと一緒にいたお嬢ちゃんじゃないか!?なぜカレンと?」「あら、あなた達2人とも知り合いだったの?」「ああ。この子はこの前団長に報告した悪魔祓いと一緒に旅してる子だ。…この子がいるって事はまさかこの国に紅の悪魔祓いがいるのか?」ミーナを見てグレンの事を思い出したエバルフ。焦っているのか額から汗が流れ落ちていた。それに気づいたミーナはエバルフを気遣うように返した。「大丈夫ですよ。この国に来てからグレンと私は別々に行動してるますから。」「ホッ……そうかそうか。じゃああいつは今いないんだね?」一瞬だけ安心したため息を吐くエバルフを見てカレンは笑いながら馬鹿にするように。「あはははっ!何ビビってるのよ。ほんっとに情けないわねぇ。」「うっ、うるさい!お前はあの化け物を見てないからそう言えるんだ!」「あんたと一緒にしないで欲しいわね。どんな敵がいても私は負けずに挑むわ。あんたと違ってね!」「何だとー!」2人が言い争ってるとそこに割り込むようにミーナが口を出した。「あのー。カレンさんの仕事ってもしかして…魔法騎士団の騎士ですか?」「ええ、そうよ。ちなみに私は10騎士長でこの人(エバルフ)よりも上の位よ。」指を差しながらエバルフを見
あれから数日後、グレンとミーナは旅を続けようやく大国イフリークに到着した。 この世界には東西南北の四つの大国がありここは西の大国で他の4つの国に比べると魔法を主とした文化が発展していた。 「わぁ~!みてグレン!建物があんなにも大きいよ!」 初めて見る都会の建物が珍しいのかミーナのテンションはいつも以上に高かった。 そんなミーナにグレンは呆れた様にため息をついた。 「…さっさとこっちこい。入国の手続きするぞ。」 この国では他国からのテロの防止の為か入国する際に身元と持ち物点検を兼ねた手続きが数カ所ある国の出入り口で行われていた。 もちろん勝手に不法入国すれば国中に警報が鳴り渡りこの国の守護神である魔法騎士団が一斉に出動する事態になり、問答無用で逮捕される。 魔法騎士団の強さは常人を遥かに凌ぐ存在と知っているためかこの国では犯罪件数はほぼ0に近かった。 グレンは入り口まで行くと係りの人に自身のパスポートを出してくださいと言われた。 「おい、お前のパスポートも出せ。この国ではお前の分も必要なんだよ。」 「ちょっ、ちょっと待って…えーっと…」 ミーナは自分の整理整頓されていない鞄をあさりだすが中々パスポートが見つからないためグレンは眉をピクピク震わせていた。 「なんだその汚い鞄は…ったく。すまんが俺のだけでも大丈夫か?急いでるんで。」 グレンは見るに見かねたのか係りの人に自分のだけでいいかたずねた。 「分かりました。今回は特別に1人だけのパスポートのみで入国を許可しましょう。ではこちらをお通り下さい。」 係りの人に案内されるとグレンはそのまま通過するがミーナはまだ鞄の中からパスポートを出そうと探しながら歩いた。 「あーー!!!」 するとミーナは急に大声を出したのでグレンと周りにいる他の人たちは全員こっちを振り返った。 「ど、どうした!?」 「見つかった…」 「え?」 「良かった~!パスポート見つかって。」 どーやらミーナは汚い鞄の中からパスポートを今頃見つけ出して喜んでいた。 グレンとその場にいる人全員はこれを見て同時にこう思った。 「(ややこしいからやめろって。)」 2人は入国を許可されたのでこの国の入り口を通り、大通りに出た。 その通りには普通の町では買えない木の
今からおよそ10年前、ある国の悲劇によって世界中を恐怖させた。 その国は、赤い地獄ーレッドヘル。 昔は世界で一番平和で活気のある国だったが10年前の事件によって人はこの国に立ち入る事を禁止された。 そう、人はいない。 昔の事件の影響によって太陽は隠れこの国は年中黒い雲に覆われ冷たい風が街を吹き抜ける。 レッドヘルの中心部には一つだけ壊れていない小さめの建造物があり、その建造物はこの国の地下に繋がっている。 その地下には世間には知られていない場所があった。 地下の悪魔の住処ー通称(悪魔界) そこにはたくさんの悪魔が生存していて地下には建物や店が出回っていた。 そこにも人間と同じようにトップの悪魔が存在しその者達が集う場所があった。 その部屋には10人程度の悪魔達が椅子に座っていてそのうちの1人の男が言った。 「おい、聞いたかよ?あのロフィスがやられたらしいぞ?」 その男は逆立った黒髪に目がつり上がっている悪魔だった。 その発言に今度は手足の細いスタイリッシュな体型に金の長髪にウェーブが掛かった大人女性が返答した。 「らしいわね。あの予知能力は私達にはない存在だったから結構便利だっだのに…残念だわ。」 その女性はロフィスではなく、ロフィスの能力にしか興味がないようだった。 「なに呑気な事言ってやがんだ。ロフィスが殺られたって事はよぉ、あの悪魔祓いとか言う人間に負けたってことだろーが!」 逆立った髪の男が金髪の女性を睨みつけ怒鳴った。 それに対して女性はクスッと笑い。 「全く、まだまだ可愛い"憤怒"ね。まるで怒鳴るのがカッコ良いと思ってるような学生の反抗期のようね。」 「うっせーな"色欲"のくそババァ。てめえみてえなバカ女は男のケツでも追っかけてろ!」 憤怒と言われた男は凄みを利かしながら言った。 すると女性から笑顔は消え、無表情の顔になった。 ガタァンッ!! 「……は?あんた喧嘩売ってんの?」 椅子から立ち上がると黒いオーラが体の周りから発生し、それを見て憤怒の男が下品に笑いながら挑発する。 「ハッ!やるなら掛かって来いよ!このブスが!」 「このガキ……一回死ななきゃ分かんないのかな…?」 2人が攻撃態勢に入ろうとしたその時。 バァァァン!!! 机を思
「…ふわぁーーー…今日はなんだか疲れたなー。」 眠さで大きなあくびをするミーナ。 ロフィスの一件の後、グレンとミーナは町の外れにある綺麗な水辺の近くに寝泊まりすることにした。 「けどグレンの空間能力はすごいね。なんでも収納可能じゃん。」 テントや寝泊まりするために必要な道具はグレンの空間能力のポケットから引き出した。 「…そういや、エバルフさんが言ってた事ってほんとかな?」 ミーナはエバルフ達と別れる際に、エバルフからこんな事を聞いた。 昼間 ロフィスを倒した後、エバルフ達はグレン達の方に向かって一列に整列した。 「今回の件に関しては、紅の悪魔祓いの協力で獄魔の討伐に見事成功した。感謝する。それと、お嬢ちゃん。…ありがとう、君のおかげで騎士団の誇りを思い出せた。」 「全隊、礼!!」 そしてエバルフの号令でエバルフと部下達は全員揃って頭を下げた。 「俺を捕まえなくていいのか?ずっと狙ってたんだろ?」 「まさか、今日俺たちの命を守ってくれた恩人を捕まえるわけないだろう。…では、俺は今日の事を騎士団の団長に報告しなければならんからここで失礼する。」 エバルフ達は去ろうとしたがエバルフは最後に振り返ってからこう言った。 「一応言うが団長には気をつけろよ。あの方はお前みたいな強い奴と戦うのが好きだから会えば必ず戦いになる。そうなったら流石のお前も命はないぞ。」 それを最後に言い残し、部下を引き連れて去っていった。 「………命はないぞ…っていう事はグレンより強いのかな?」 悪魔を余裕で倒すグレンに勝つかもしれない人なんて相当強いに決まってる。 「だとしたらグレンとその団長は近づけてはいけないわ。…そういえばグレンは裏で何してるんだろ?」 ミーナはその事を伝えるためにテントの裏に顔を出してみた。 そこには何やら坐禅を組みながら目を瞑り、魔法書のような物を開いていた。 その周りを囲む様に黒い魔法陣が地面に展開され、そこでひたすら呪文のような物をブツブツと唱えていた。 ミーナはよく聞き取れないので気づかれないようにそーっと近づいて聞いた。 「(何だろう…?こんなに近くで聞いてるのに何言ってるのかさっぱり…)」 ミーナはここで邪魔するのもグレンに悪いと思ったのか終わるまでそばで待つ事にし
「エバルフさんの悪魔化が…解けたぞー!」 「「うぉぉぉ!!でかしたぞお嬢ちゃん!!」」 エバルフの悪魔化が解けたことで部下たちは喜び叫んだ。 グレンはミーナがエバルフの悪魔化を止めれた事を未だ信じられないのか唖然としていた。 「信じられんな…ただの人間が悪魔化を阻止するなど…」 (まったくだ…てめえですら悪魔化を阻止できた事ねえのによぉ) グレンの悪魔もグレンと同じくミーナの行動を感心した。 「…何てことだ…あの人間の悪魔化を…」 悔しそうな顔をしながらブツブツ独り言のように喋るロフィス。 そして一気に顔の表情を強面に変えて。 「よくも俺達の計画を…3年かけたこの計画を無駄にしやがったな…許さん…許さんぞぉぉぉ!人間どもぉぉぉ!!!」 ロフィスの声の大きさに全員再び戦闘体制に入ろうとした時。 「…!?…ガァッ!…」 ロフィスの指先から出た一筋の光線がエバルフの胸を貫き、エバルフの体は地面に倒れこんだ。 「エバルフさん!おい、ロフィス!いい加減にしろてめぇ!」 「いい加減にしろだと?こっちのセリフだクソ人間…。3年だぞ…こいつを悪魔化させんのにどれだけ苦労したか…許さんぞ。お前ら全員皆殺しにしてやるよ!」 ロフィスの腕と顔が変形し始めた。 黒い体は普通の悪魔と同じだがロフィスの変異は普通の悪魔と違い人間の面影を残したまま腕と顔が黒く変異し、髪は茶髪のままだった。 「あの人も悪魔の姿に…」 「落ち着けミーナ。危険だから後ろにいてろ。」 その姿があの時のシェスカと重なって見えたのかミーナは怯えていたがグレンに言われてエバルフの部下達の所に移動した。 そしてグレンはロフィスの方に再び顔を向け。 「…とうとう本性を表したな…」 「殺してやるよ…この姿にさせた事、後悔するがいい!」 まず最初に動いたのはロフィスだった。 ロフィスの怒りは極限状態なのが周りにも伝わってきて戦ってもいない部下達の何人かは反射的に一歩下がった。 ロフィスの拳がグレンの顔面を狙ってくるとグレンは大剣の剣脊でそれを受け止めた。 キィィィン!!! 金属同士がぶつかる音が鳴り響く。 「(こいつの拳は金属類に匹敵するのか!?大剣でガードしたのにビクともしねぇ!)」 しかしロフィスはグレンに考え
「お兄ちゃん!助けてー!」 「待ってろ!すぐ助ける!…くそっ、騎士団より悪魔が多すぎる…」 理由は分からないが突如現れた悪魔の大群は町に現れ、たくさんの人々を殺戮していた。 俺はちょうど騎士団の仕事でこの町にいたので仲間と共に悪魔に対抗していた。 大半の悪魔は倒したはずなのだがどういう訳か悪魔は増える一方でエバルフ達は苦戦していた。 その目の前には妹が悪魔に取り囲まれていた。 「エバルフさん!悪魔が多すぎて我々じゃとても…」 「くそっ、団長がいればいいんだが今あの人は他の任務だからな。どうすれば…」 エバルフが悩んでると妹を囲んでいた悪魔が妹を切り刻もうと爪を振り下ろしたその時。 グサッ… 何かが斬られた音がした。 これは妹が斬られた音ではなく、悪魔が斬られた音でその悪魔は斬られた背中を押さえながら倒れてしまった。 悪魔を斬ったのは黒いローブを身にまとっていて顔はフードを被っていたのでよく見えないがどことなくグレンに似ていた。 周りにいた悪魔は仲間が斬られた事によってこのローブの男を敵と判断した。 そして爪を伸ばして襲いかかった。 しかし、その男は目に見えない速さで悪魔を斬りまくっていった。 そして男が目で判断できる速さになった時には悪魔達の体から切り傷が出てきて血を吹き出しながら倒れた。 それを見たエバルフは妹が助かったと思ってホッとした。 「よかった。妹は無事に助かっ…」 エバルフは目の前の状況を理解するのに少し遅れたがそれに気づいた時彼は狂ったように発狂した。 「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」 そこには悪魔の死体の中に妹の死体まで混じっていたからだ。 「お気を確かに、エバルフさん!…なんて事を…」 横にいた部下の男はエバルフの妹を見てから黒いローブの男を睨みつけた。 黒いローブの男は悪魔と一緒に妹まで斬ったのだ。 しかし、謝罪もせずにその場を立ち去ろうとした。 「…待てよ。」 エバルフはうつむいているが地面につけた手からは怒りで震えているのがわかった。 立ち去ろうとするローブの男を呼び止めたると男は言った。 「…何を怒っている?俺の射程距離にコレがいただけだ。運が悪い。」 「な…に…」 「そんな睨むな。助けれなかったのは







