Masukこの世界には悪魔がいました。
悪魔は夜にしか活動出来ないが生まれつき力が強く、人の心臓または目を好んで毎晩人を襲いました。 そんなある日1人の男が悪魔をこらしめました。 その男はこの国の王子様…否 この世で一番、悪魔に近くそして心無い男だった。 「…!はぁ…はぁ……何、今の夢。」 確か小さい頃読んでた絵本の内容だったけどすごく怖かったような… 「おはよぅ…」 「おはようミーナ。もう体大丈夫なの?」 「体?そういえば私、気絶してしまったんだね。全然覚えてないな」 昨日玄関前で気絶してからミーナの母親はミーナを家の中まで運びベットに寝かせたのだった。 一度目を覚ましたが疲れがたまっていたのかすぐに寝てしまったらしい。 ミーナは朝起きてから学校に行く準備をし、朝ごはんを食べ家を出た。 「行ってきます…」 「行ってらっしゃい。…どうしたのミーナ?元気ないわよ?」 「そ、そんなことないよ!じゃ、行ってきまーす!」 ミーナは昨日殺された友達は絶対来ないものだと思うと不安で仕方なかった。 まだ17歳のミーナには辛くそして悲しい現実だった。 学校に着いてクラスに行っても案の定友達の席には誰も座っていない。 やっぱりあの時… キーンコーンカーンコーン 「はーい、じゃあ席につきなさーい」 私がカバンから教科書を机に移してるとタイミングよくチャイムがなりそれと同時に担任の先生が入ってくる。 「はい、それでは朝のホームルームから始めたいと思うのですが…その前に皆さんに大切な話があります。」 すると先生の顔がいかにも深刻そうな顔に変わった。 きっと友達の事だろうなぁ。 「…実は今日3人ほど学校に来ていませんが昨夜その親御さんから行方不明の連絡がありました。」 やっぱりシェスカ達の事だったんだ… ミーナはそう思うととても心が痛かった。 別にミーナが悪いわけではないが自分だけが生き延びて学校に来てるのはおかしいと思ったからです。 「確かシェスカさん達はミーナとよく一緒にいましたが…何か心当たりはありますか?」 「……」 「ミーナ…さん?」 「実は…シェスカ達は…」 ガラッ ミーナが言おうとした時、急に教室の扉が開いた。 扉を開けた人物にミーナは目を疑った。 それは昨日目の前で殺されたはずの… 「…!シェスカ!エミー!イルミ!…え、どうして…」 「ごめんね、ミーナ。ちょっと寝坊しちゃった。」 「先生ごめんなさーい!」 「とりあえず遅刻届出したんで座っても大丈夫ですかー?」 「全く三人とも…後で職員室まで来なさいよ!」 「「「はーーい!」」」 そう言って三人は自分たちの席に座りカバンの中から教科書類を移し始めた。 ミーナは三人が生きていた事に嬉しくて泣いていた。 良かった…本当に良かった…。あの時死んだと思ってた…。 「はい、ミーナさん!何があったのか分かりませんが泣かないの! はい、ホームルームを始めるわよ!」 そう言って先生は5分ほどホームルームをして教室を出た。 ミーナは早く三人と喋りたくて終わってすぐに三人の机の近くまで来た。 「よかったぁー!三人とも無事で。シェスカ胸大丈夫なの?」 「え…ま、まぁ何とか大丈夫だったみたい。」 「エミーもイルミも大丈夫?」 「わ、私はほら。そんなすぐ死ぬ奴じゃないでしょ?あははは」 「運が良かったっていうか…何ていうんだろ?…まあそんな事いいじゃない!」 「なんかみんなよそよそしぃ!ねえねえ、今日もいつものとこに遊びにいこーよ!」 「遊ぶ?…あー、いつものとこね!分かったわ!」 「やったぁー!あ、その前にちょっと私トイレ行ってくるー!」 ミーナがトイレに行くと同時にチャイムがなり、ミーナはヤバイと言いながら走ってトイレに行った。 チャイムがなったことでクラスの生徒達がミーナ以外全員戻ってきた。 そして最初の授業の先生が入ってきて主席名簿を取り出した。 「ミーナはトイレか。しょうがない…。じゃああいつ抜きで出席確認をするから返事しろよ。」 先生はそれぞれの名前を読み始め、名前を呼ばれた生徒はそれに対して返事をする。 「……ニヤァ…」 「…そろそろだな。」 「お腹すいたぁー…」 授業が始まってからすぐに、シェスカとエミーとイルミが急に席を立ったので生徒達と先生は三人に注目した。 「おい、お前ら何立ってんだ!早く座らんか!」 「……」 「……」 「…ニヤァ」 嬉しい。 あの三人が生きて学校に戻ってきてくれて本当に良かった。 これでまたいつものように楽しく学校で… ミーナはお手洗いを済ませて手を洗い鼻歌を歌いながら教室に戻った。 教室につくと授業中のはずなのにドアが開いてた。 あれ?なんで開いてるんだろ? …まっ、いっか! 「先生!遅れてすいませんでし…」 「きゃぁぁあ!!!」 そこにはミーナがトイレに行ってた3分くらいの間人の血で染まっていた。 「みんな…みんな!何があったの!ねぇ?…先生!」 みんなに声をかけるが誰1人返事を返さない。 生徒達のほとんどは体の原型をとどめられないくらい八つ裂きにされていて、先生に関しては目と心臓部分を抜き取られていた。 「目と心臓が…ない……うっ…ハァ、ハァ…」 先生の死体を見てミーナは思い出した。 こんな殺し方普通の人間には出来ない。それにシェスカ達だけいないみたい。これは… ピーンポーンパーンポーン すると突然学校のアナウンスがなった。 「全校生徒の皆さんに伝えます! 今すぐ学校から逃げてくださ…グシャ!」 アナウンスの人は言い終わる直前に何かあったようだ。 するとこの階の端から叫び声が聞こえる。 「きゃぁぁ!」「助けてー!」 グシャァ!!! 「ひっ…ひっ…」 ミーナは今度は自分の番だと思い、学校の外を目指して走った。 (殺される!逃げなきゃ殺される!) 「どこ行くの?ミーナ?」 するとその前にはさっき教室にいなかったシェスカが手を後ろに組んで立っていた。 「…シェスカ……」 「どこ行くのミーナ?」 シェスカは腕を後ろに組んだまま笑顔でこっちに近づいてくる。 まるで腕を隠しているようだった。 「どうしたの、ミーナ?なんでそんなに汗かいてるの?」 「…あなた、誰?」 「え、シェスカよ?急にどうしたの?」 「違う!あなた…いや、他の二人も…あなた達一体、何者なの?」 「……」 「答えて!本物のシェスカは…エミーやイルミはどこ行ったの!?ねぇ!」 ミーナの問に答えようとしないシェスカ。 するとシェスカの後ろから声が聞こえた。 「あー、おいしかった…ジュルッ…」 「お腹もだいぶ落ち着いたって感じ♪」 「エミー!イルミ!…その手はもしかして…」 後ろから現れたエミーとイルミの手は人の血で真っ赤になっていて、エミーは血の付いた手をおいしそうに舐めていた。 「あれ、あんなところに餌(人間)が残ってるー!」 「ほんとだ!シェスカ、食べてもいいよね?」 するとさっきまで黙っていたシェスカはニヤリと笑い、そして。 「…あぁ、いいでしょう…。血の一滴残さずにね。」 「シェスカ…エミー…イルミ…。やっぱりあなた達…」 「悪いわね、ミーナ。私たちはもう人ではないの。だから正直あなたの事なんてどうでもいいから…死んで?」 「うっ…うっ…」 ミーナは絶望のあまりその場に立ち崩れてしまった。 まさか自分の友達が悪魔になってしかも学校の人たちを殺しているのだから。 (悪魔は…死んだ人間にまで絶望を与えるの?…シェスカ達がそんな事思うわけない。) 「あははは!安心して!私が食べてあげるからぁ~!!」 エミーが最後に言うとエミーの体が昨日の化け物のような姿に変わりミーナを襲った。 グシャァァ!! 「!?ガァァぁぁああ!!」 「…あれ?私死んで…」 襲われたミーナは無傷で代わりに襲ってきた悪魔のエミーが胸を大剣で刺されていた。 「…何者だ、貴様!」 そこには昨日ミーナを助けた黒いローブの男が大剣を持って立っていた。 「あ、あなたは昨日の…」 「…こんな時間に活動する悪魔がいるとは…」 あの時は夜だったため顔がよく分からなかったが今はローブについてるフードを被っていて顔が見えなかった。 するとさっきまで胸を刺されてもがいてたエミーは次第に胸の傷が再生して立ち上がり、ローブの男を睨みつけた。 「殺してやる!殺して…コロシテ…ヤル!」 するとエミーの身体はさっきよりも化け物みたいな姿に変わっていった。 その姿は例えるなら悪魔というより二本足で立っている狼のようだった。 そしてエミーは一瞬で男に迫り、爪を連続で繰り出した。 しかし、ローブの男はその攻撃を息一つ切らすことなく全て大剣で防いだ。 「エグッテヤル!…エグル…エグル!!」 エミーが激しく攻撃してもローブの男にダメージを与えることはできず、これ以上やってもラチがあかないローブの男はエミーを大剣で吹き飛ばした。 吹き飛ばしたその隙に左手で空間に穴を空けて、ローブの男はその穴をくぐり抜けその場から消えた。 「…ドコダ…ドコイッタ…。出テ来イ!…エグッテヤr…ガハァ!」 突然エミーの背後から現れたローブの男は隙だらけのエミーの背後を大剣で縦に切りつけ、エミーは血を吐きながらその場に倒れてしまった。 「エミーーー!!!」 悪魔の姿になっても友達だったエミーを2度も殺される所をミーナは涙をボロボロ流しながらそれを見るしか出来なかった。 「頭の悪い悪魔はやり易い。…次はどっちだ…かかってこい。」 「てめぇ!エミーをよくもっ!」 「やめな、イルミ。仲間を殺されて悲しむなど愚かな人間のやることだ。」 今度はイルミが姿を変えようとしていたが、シェスカはそれを止める。 そしてシェスカはローブの男に質問した。 「貴様は何者だ?その魔力からして人間ではないのは確かだが悪魔でもないな。」 するとローブの男は大剣を下ろすと被っていたフードを脱ぎながら答える。 「…お前らのように人を喰らう存在がいれば、その悪魔を喰らう存在もいる。」 「悪魔を…喰らう存在?」 フードを脱ぐと男の髪と瞳は炎のように真っ赤に染まっていた。 「俺は貴様ら悪魔を食い殺すために自ら悪魔と取引し、力を手に入れた。名はない。だが周りは俺をこう呼ぶ。」 「紅の悪魔祓い、グレン。」 そう言うとグレンと名乗った男は着ていたローブを脱ぎ捨て、大剣を構えた。 「紅の…悪魔祓い…なるほど、通りでエミーを一瞬で殺せたのか。しかし悪魔祓いが本当にいるとはな。」 (しかし、悪魔祓いの奴がなぜここに?それになぜ他の生徒は助けずにミーナだけを助けるんだ?) シェスカが考えているとグレンは大剣を構えて迫ってきた。 それをイルミが爪で防御し大剣を止めた。 「いきなりシェスカはないでしょ?悪魔祓い…さん!!」 イルミは最後の語尾だけ強く言い、大剣をはじいた。 「あははは!エミーを殺したからって調子乗らないでね!今からあなたを綺麗に串刺しにしてやるから!」 するとイルミの両手の爪はゴムのように伸び縮みし、伸びた爪でグレンを襲う。 グレンはローブを脱いだのか動きが早くなり、余裕の表情で大剣を使って防ぐ。 「余裕ぶってんのも今の内よ!ほらっ!」 イルミが言うと一本の爪が大剣を滑るようにかわし、そのままグレンの腕をかすった。 他の爪も同様、次第に大剣を滑るようにかわしてかすり出す。 「ほらほらぁ~!どんどん当たってきてるわよぉ?疲れちゃったの?」 グレンはまるで軟体動物の触手みたいにグニャグニャする爪に苦戦していた。 グレンは左横に空間の穴を空けて再びイルミの背後を狙おうとした。 だが、動きを読まれていたのかイルミは伸びた爪を引っ張ってきて防ぐ。 「残ねぇ~ん!さっきの見て思ったんだけどあんた相手の背後狙うの好きだねぇ?」 イルミは伸び縮みを利用して横に爪を振りきった。 グレンはとっさに空間移動したが右腕だけ少し切り傷が入り、そこから血が流れていた。 「あらら~、痛そうね。てかさ、いい加減本気出したら?」 「…」 「とぼけないで。悪魔と取引きしたのにそんな弱いわけないでしょ?それとも本気の出し方を知らないの?」 イルミが言うとグレンは一回ため息をつき、そして。 「…いいだろう。少しだけ本気を出す。だが、これだけは言っておく…」 そしてグレンの立ってるところから黒い魔法陣が現れるとそこから黒い炎が発生し、その炎はグレンの身体を纏う。 「…どうなっても知らないからな…。」 グレンは黒炎を大剣に纏い、再び構えた。 「へー、さっきよりも魔力は上がったみたいね。けど炎じゃ私を倒せないわよ!」 イルミは爪を伸ばしてグレンを襲い、グレンはさっきと同じようにそれを大剣で防ごうとした。 「あははは!あなた学習能力ないわね!八つ裂きにされなさ…」 「イルミ!離れなさい!」 「えっ…きゃぁあああ!!」 イルミの爪は大剣に触れるとそこから黒炎が勢いよく燃え移り、イルミの身体を燃やした。 そしてグレンは空間移動を使ってイルミの近くまで移動し、黒炎を纏った大剣で縦に切りつけた。 グシャァッ!! 「ガァッ…!ガッ…」 「悪魔の炎は相手がチリになるまで燃え続ける漆黒の炎。お前が消えるまで炎は消えない。…これが悪魔と取引して手に入れた力だ。」 「ガァッ…ァ…ァ………」 イルミは次第に声が聞こえなくなり、そのまま黒炎によってチリになって消えてしまった。 「イル…ミ…うぐっ…」 イルミまで目の前で殺されてミーナは言葉が出なかった。 「最後はお前か…銀髪の女……いや、悪魔だな。」 グレンは大剣でシェスカを指す。 シェスカは黒炎によってチリとなったイルミを見ても表情を変えることはなく、寧ろ口角を吊り上げて不敵に笑った。 そして身体を化け物に変異し視線をグレンに向けて言った。 「あなた何か勘違いしてない?確かにあなたは強いわ、人間にしてはね。けどあなたは私には勝てない。そう、そんな悪魔の力を借りた程度じゃワタシニハ…カナワ…ナイ!…グルルルッ!」 シェスカは言葉を発するに連れて理性を保てずに獣のような唸り声を出していき、グレンを獲物と認識したかのように睨んだ。 そして一気に襲いかかり、右手の爪を上から思い切りグレンに振り下ろした。 グレンは空間移動の魔法で一瞬でその場からいなくなると一瞬でシェスカの背後に現れて横に斬る構えをとった。 しかし、シェスカはそれに気づいてたらしくすぐに判断して爪で大剣を防いだ。 そして剣ごとグレンを後方に押し飛ばした。 「オナジ…マホウ…キカナイ。グルルルッ…」 飛ばされたグレンは廊下の一番端の壁に背中から直撃し、血を吐いて片膝をついた。 「ガッ…ぐ…っぺっ!…」 「マ…ダ…マ…ダ…」 グレンが立ち上がろうとした直後、目の前には爪を引っ込めた状態で接近してきたシェスカは手を拳に変え、グレンを殴りまくった。 グレンは避けることができず只々その攻撃を受けていた。 …いや、この時は受けているように見えた。 容赦なく殴り続けるシェスカ。 通常、悪魔に1発でも殴られた人間は全身の骨が粉砕し再起不能の状態になるほど筋力が特化している。 グレンはその何倍も殴られた。 普通の人間ならまず生きることはできない。 ひとしきり殴ったシェスカは悪魔の姿から人間の姿に戻り、理性の失ってた声は落ち着きを取り戻した。 「まあ、こんだけ殴ったら普通死ぬわね。…さて、そろそろ食べさせてもらうわよ?ミーナ?」 ジュルリとヨダレの音を立て、爪を伸ばしてミーナに近づく。 ミーナは恐怖で怯え立ち上がることができず腰をつけたまま後ずさりしていく。 「あーらあら。人間って本当に愚かね。さっさと殺されたら楽になれるのにね。こいつみたいにさっさと楽になれば…」 シェスカが後ろにいたグレンを指差そうとした時、その指は急に捕まれそのまま関節の曲がらない方向にねじ曲げられた。 「ガァァァァ!!っ…なんで倒れてないの!?普通の人間なら死んでるはず…」 「普通の人間なら…だろ?」 シェスカの指をねじ曲げたのはまるでさっきのダメージを受けてないかのように涼しい顔をしたグレン。 ねじ曲げて取ったシェスカの指を黒炎を発生させてチリにした。 「なぜダメージを受けてないんだ…そんな顔してるな、クソ悪魔。」 「反(リバース)魔法ー、相手から受けた物理攻撃を吸収し自分の力に変換する。そして…」 拳を強く握りしめ、足を一歩前に出すとシェスカは反射的に一歩後ろに下がった。 「俺はお前と全力で戦ってない。」 そう言ってグレンは魔法を纏っていない右拳をシェスカの腹にぶち込んだ。 反魔法によってダメージを吸収したことによって魔法を纏ってないのにも関わらず拳から衝撃が発生しシェスカの腹はえぐれ内臓が飛び散る。 あまりの痛みにシェスカは意図せずに悪魔に変異してもがき苦しんだ。 「がっ…ガァァァァァァア!!!ああ…ァあ…」 悪魔か人間かどちらかわからない状態でもがき苦しむシェスカ。 そんなシェスカをグレンは一旦その辺に置いていた大剣を再び持って剣先でシェスカを指した。 「お前に人間として生きる道はない。とっとと死にやがれ」 剣を振り上げてシェスカの息の根を止めようとするグレン。 「やめてーー!!!」 剣を振り下ろそうとした瞬間、ミーナの叫び声によって剣の動きが止まる。 「邪魔するな、女。こいつは悪魔、殺さなければこっちが殺される。」 「分かってる…分かってるわよ、そんなこと!分かってる…。でも…その悪魔…シェスカは私の友達。どんな姿になっても…友達…友達だから!だから…シェスカを…助け…」 ミーナは涙を流しながらのため呼吸が下手になり、そうながらも友達を守るために必死で阻止しようと声を振り絞った。 しかし、グレンは表情を一切変えずに 「昨日の夜言ったはずだ。昨日の事、友達の事は忘れた方がいいと。それにこいつら悪魔は人間の心臓を食うことで新たな悪魔を生み出す。このシェスカも悪魔に身体を乗っ取られただけだ。残念だがこいつは殺す。」 そして剣を振り下ろし、シェスカからは悪魔特有の黒い血しぶきが飛び散った。 それを見てミーナは狂ったように発狂し、その場に崩れ落ちた。 グレンは大剣をポケットのような空間にしまい込みミーナに近づくとしゃがんで彼女の頭をさすりながら彼女の目を見て言った。 「悪魔は残酷だ。人間の心臓を奪って殺し、殺した死体に新たな悪魔を誕生させて他の人間の心臓を奪うという負の連鎖を繰り返す生物だ。…まずはこの学校を殺された死体ごと燃やさなければならない。出るぞ。」 グレンはミーナの頭を触りながら転移魔法で外に移動した。 外に転移したグレンとミーナは学校の入り口の前まで移動した。 グレンはミーナに側から離れろと言うとミーナはグレンから20メートルくらいまで離れ、離れたのを確認すると両手を入り口前の地面に置いた。 「ー黒炎よ、負の魂を焼き払えー」 グレンが魔法を唱えると学校を囲むような黒い魔法陣が発動し、学校の校舎は黒炎によって黒く燃え始めた。 その黒炎は普通の炎と違い、辺りに燃え広がることはなくその校舎の位置だけを燃やしていく。 「ギャァァァァ…」 殺された人間の何人かは悪魔になって復活したが、学校ごと燃やしたため中で悪魔の声らしきものが聞こえてきた。 グレンが学校を燃やしたのは一見残酷だが殺された人間が悪魔になって他の人たちを襲わせないためである。 燃えていく学校を見ながらグレンはミーナに言った。 「お前はこれを見て辛いか?」 「…辛い…でも、仕方ないよね。もし学校を燃やさなければ大量の悪魔ができちゃうもんね…」 「その通りだ。辛いと思うが今起きたこの現実を決して忘れるな。」 「…うん。」 ミーナの精神状態はもうまともで入れる状態ではなくグレンの言ってることをぼーっとしながら聞き流すようにコクっと頷いた。[ライクとニケル]サイド。目の前の悪魔達に対し、2人共雷神と風神の姿へと変貌した。「一気に潰してやるよ!」「魔力操作"極(ぎょく)"!火雷(ほのいかづち)!」ライクの背中の上から2番目の鼓が光ると右手から高電圧の雷が溜め込まれる。今までの火雷はそのまま一瞬で放たれるも、魔力操作"極(ぎょく)"により溜め込み時間が普段より10秒くらい掛かる。溜め込まれた右手の雷を悪魔達に向けて一筋の矢の様にして一直線に放たれる。ドカァァァン!!!炎を帯びた雷の大爆発は魔力操作"極(ぎょく)"により、普段よりも10倍以上の威力を発揮した。その威力により、1回の爆発で100体以上の悪魔が一気に消滅した。「っしゃあ!やりぃ!」魔力操作"極(ぎょく)"が上手くいき、調子付くライク。ーーこのままやってけば、あっという間に。しかし、そんな希望は一瞬で崩れ去る。ライクの雷で消滅した側から、再び後ろの方から悪魔が再生していった。「いぃっ!?何だ!?何でまた再生したんだ!?」「…成程。どうやらこの修行、悪魔達を全員殺すのが目的じゃないみたい。」「どう言う事だ、ニケル?」「つまり、この永遠に湧き出てくる悪魔を3日間、休みなく戦い続けなければいけないって事だ。」そう。ニケルが言った通り、2人の修行はこの悪魔達を全員倒す事が目的ではない。絶え間なく湧き出てくる悪魔達を魔力操作"極(ぎょく)"を使って戦い続ける為の持久性を鍛える事が目的であった。「だからライク。そんな大技を放ったところで意味は無い。ここからはペース配分を考えて戦わなければいけない。」「成程な。効率良く戦えって事か?」「それだけじゃ無い。こいつらは魔力操作"極(ぎょく)"でしか倒せない。だからもっと成功率も上げないと。」2人は雷神と風神の力による効果で更なる力を得たのだが、持続性が無いのが欠点である。そしてもう一つ。これはライクとニケル自身の問題。2人は雷神と風神の力を過信し、いつしかそれに頼る戦いが定着しつつあった。この修行では2人のその定着した悪癖を直すのに打って付けであったが、それは只直すと言うにはあまりにも過酷な修行であった。ライクとニケルはまだ完成したばかりの魔力操作"極(ぎょく)"はまだ不安定であり、失敗する事の方が多い。その上、魔力を溜める時間に10秒必要というのも、実戦
その後、グロードの空間移動で全員をカイルの家の前へと転移させた。カイルが家に入るとカイルの母親であるカルラが出迎えてくれた。「おかえり、皆んな。あれ?今日はまた知らない人が居るみたいね。」初対面であるグロードとネルがカルラの目に入った為、すぐにグロードはカルラの前に出て挨拶をした。「申し遅れました。自分の名前はグロードと言います。元々ここに居るライクとニケル、フィナと旅を同行していた者です。そしてこの隣に居るのはネルという者です。」グロードは丁寧にカルラに挨拶をすると、隣に居たネルを手で指し示した。「ネルと言います。」ネルはグロードに続けて一言だけ挨拶をした。「母上。この人達もしばらくの間、泊めて欲しいんだけど…。」カイルは少し躊躇いながら自分の母親であるカルラに尋ねた。幾らカイルの家が大きく親が寛大だからといって、こう何人も居候の人が増えると言うのは母親への負担が大きくなると思ったからだ。流石に迷惑かな?そう思ったカイルであったが。「ええ、良いですとも!さ、上がって下さい!」「良いんですか?」カルラが笑顔で快諾した事が予想外だった為、グロードは戸惑っていた。「はい!何だかね、カイルが色んな人を連れて来てくれるお陰で、広くてどこか寂しかった我が家が楽しい空間に変わってる感じがしてね。」「それに、今更2人増えたところで我が家は何も変わらないわよ。だから、いつまでも居て大丈夫ですよ。」「そう言って頂けるなら嬉しい限りです。本当に、ありがとうございます。」グロードはカルラの器の広さに感謝しながら再びお辞儀して感謝の気持ちを伝える。その姿を見てネルもグロードと同じ様にお辞儀した。「あり…がとう、ございます。」相変わらず、感謝の気持ちを伝えるのが下手なネルはぎこちなくそう言った。「では、どうぞ中に入って下さい!」そう言って全員カイルの家の中へと入って行く。中に入るとカイルの妹であるレイアがカイル達に気付いた。「あ、お兄ちゃん!皆んな!おかえり!」レイアは居間で本を読んでいたが、カイル達に気付くと本を閉じてカイル達の方に駆け寄った。「レイアちゃん、ただいま!」「ミーナちゃん!…ムッ。修行した後はあまり近づかないで欲しいです!」ミーナはレイアが可愛いあまりほっぺをスリスリしようとしたが、汗の匂いもあって近寄って欲しくない
カイルの黒帝剣技は影の中に居る相手を斬りつけるが、距離が離れれば離れる程威力が低下する。以前ベリエル(ハイド)に負けたカイルもその弱点を見極められて十分な力を発揮出来なかった。しかし、今回は違う。カイルは特別強く刀を振るった訳では無く、グロードとも距離が離れていたのに鋼鉄の皮膚を持つグロードに傷を与えた。「たった一振りでグロードに傷を付けた!?」「凄い威力だ。あのグロードさんに傷を与えるなんて、僕達は物凄く苦労したのに。…やっぱりあの刀のお陰なのかな?」ライクとニケルは初見でグロードに傷を付けたカイルを見て驚きながらそう言った。驚いていたのは当の本人であるカイルも同じであり、カイルは手に持った二刀の刀を見つめていた。「この刀…凄い力だ。それ程強く振るっていないのにこの威力。」エミルやミーナ、フィナもカイルの斬撃を見て、ライクやニケル同様に感嘆(かんたん)した。ただ1人、ネルを除いては。ネルはカイルの斬撃を真剣な表情で黙ったまま何も喋らない。一方、傷を付けられたグロードは例の不死の肉体により、傷口はすぐに再生した。「成程。これは黒帝剣技か。それに刀との相性が抜群の影の間接的攻撃。それに加えてこの威力…。」グロードはカイルに与えられた斬撃から、ブツブツと言いながら分析をしていた。「…よし、じゃあカイル君。その刀に自分の影を纏ってみてくれ。」「えっ?何でその事を知ってるんですか?」「良いから早く。」そう急かされたカイルは言われた通り、自身の影を暗影蛇(あんえいだ)と黒纏蛇(こくてんだ)に纏った。纏った瞬間、カイルの目の色はいつもの様に赤く変化したがその直後、いつもとは違う感覚が起こった。「ぐっ…視界が一瞬だけ淀んだ…何だ、これは?」まるで胴のキツイ眼鏡を付けた様な視界が一瞬訪れたが、その後は特に異常は見られない。いや、いつもより影の動きが鮮明に捉えやすかった。「…よし、じゃあ俺に攻撃してみなさい。」「分かりました!」そう言った直後、カイルは目に見えないスピードでグロードの間合いに入る。そしてグロードの影を斬りつけようとした時だった。グロードはカイルが右手に持つ刀を振おうとした瞬間、左足で蹴り上げてそれを止めた。蹴られたカイルの右腕は上に弾かれてしまい、それにより体勢が後方へとぐらついた。「うわっ!…!?」すると
グロードは魔力感知に加えて、周囲の空気振動や電磁波を読み取って相手の特徴を把握する事が出来る。しかし、ベリエルは魔力の質や量を変化させる上に見た目も変化させる事が可能である為、グロードの感知魔法ではベリエルの特徴を捉えられなかったのだ。「俺は風魔法の微弱な風を相手に当てる事で、相手の身体の輪郭を感じ取り、相手との距離感を把握出来る。」「そして雷属性で相手の身体から発する電磁波を読み取る魔法を使えば、例え変身魔法を使っても見分ける事も可能だ。」「この魔法の効果は5000km圏内まで発揮する。だから俺は目が見えなくてもみんなの居る場所がすぐに分かるんだ。」「なっ?凄いだろ、グロードは。」グロードが自身の感知魔法について説明した後、ドヤ顔で誇らしげに言うライク。「何でお前がドヤってるんだよ。まあ、確かに。規格外だよ、グロードさんは。」「確かにそうね。5000km圏内…魔力の流れを読むとかの次元じゃ無いわ。」カイルとエミルは魔力の流れを読む修行をしたお陰で、クレーアタウンでの戦いではその修行の成果をしっかり発揮出来た。ミーナとカイルとエミルは小さな国であれば悪魔の居場所を特定出来るくらいの魔力感知能力はある。しかし、所詮は小さな国程度。グロードの魔力感知範囲は5000km圏内と規格外であり、現実世界の日本で例えるなら日本国土の約52倍もの面積に相当する。しかも魔力感知能力もずば抜けており、魔法が使えない微弱な魔力の持ち主が数km離れた場所に居ても感知する事が出来る。当然、魔力の流れを読む修行をしたからこそカイルとエミルはこの規格外なグロードとの差をきちんと理解していた。「だが、これ程範囲を広げて探してもベリエルを400年間見つける事が出来なかった。それなのに20年前、突然奴は俺の感知魔法に引っ掛かった。」「その時の感知した感覚は、何も無い場所から突然現れた様な感覚。まるでわざと見つかりに来たかの様な現れ方だった。」そう。20年前にベリエルを魔力感知で見つけた際、この様に突然現れた様な感覚に当時のグロードは驚いていたのだ。「つまり、ベリエルはわざと見つかる為に本来の魔力と姿を戻した。そういう事か?」「その通りだ、ネル。奴は自分の計画を俺に邪魔されたく無かった。だから20年間、俺は奴に封印された。」「20年間!?…じゃあ、俺達と神の遺跡
この世界を作った神が居ました。その神の名は理王(リオ)。森羅万象を司る神にして、全ての万物、生物を生み出した世界の始祖となる存在。数億年前、理王(リオ)は3つの世界を作り出した。1つ目の世界は、神や天使が存在する[天界]。2つ目の世界は、悪魔が存在する[魔界]。3つ目の世界。それが今現在、人間達が暮らしている世界である。元々は月の遺跡に暮らしていた古の化け物が先に生み出されたのだが、2つの世界を先に作り出した時に理王(リオ)はこう考えた。「色んな種族や生物が存在する事で、その世界に変化が起きるのでは?」そう思った理王(リオ)は古の化け物と一緒に人間という生き物を3つ目の世界に生み出した。人間だけでは無く、動植物や魚、鳥など色んな生き物を3つ目の世界に生み出し、その生物達が暮らせる様に大陸を作り出した。この沢山の種族が生み出され、混在した3つ目の世界を理王(リオ)は[混界(こんかい)]と呼んだ。人間は寿命が短い代わりに沢山の変化をもたらし、その変化は人々の生活をより豊かにしていく文明の発展へと繋がった。天界と魔界には起きなかった変化。これが天使や悪魔には無い人間の才能であり、長所であった。天界、魔界、混界。この3つの世界全ては本来交わる事が無い。しかし、天界と魔界。この2つは違う。この2つの世界は同じ時期に対となる関係として生み出された。そう、これは理王(リオ)が最初に犯した過ち。天界を統括する理王(リオ)と相対する存在が、魔界の悪魔として生まれてしまったのだ。その悪魔は魔界の王として、理王(リオ)の力を奪う為に1億年前に天界を襲った。天使と悪魔の戦争。そして理王(リオ)は悪魔の王に勝利した。しかし、あまりにも強過ぎる悪魔の王を完全には消す事が出来なかった。その代わりに、理王(リオ)は2度と悪魔の王を復活させない為に、彼の魂を7つに分割した。それが7つに分断されし悪魔である獄魔7将。リフェルとベルゼバブ達はこうして生まれたのであった。魂を7つに分割した理王(リオ)は、その魂を新たな悪魔の肉体の器に入れ込んだ。そして残った悪魔の王の肉体は2度と復活出来ない様に別次元にある混界に封印した。本来悪魔は別次元では肉体を維持出来ない仕組みになっているのだが、その悪魔の王は肉体を維持出来る。悪魔なのに、神と同等の力を持ってい
「いつもありがとうね、リーナさん。」「いえいえ、私にはこれくらいの事しか出来ませんので。」カイルの家ではカイルの母親とミーナの母親であるリーナが、皆んなの食事を作って準備していた。クレーアタウンを悪魔に襲撃され、住む家が無くなったリーナは娘のミーナと一緒に居候させてもらっていた。(第34話参照)家族以外の人が増えるという事は家事をする者の負担が増えるという事だが、主婦としての家事スキルが高いリーナのお陰でカイルの母親は物凄く助かっていた。「リーナさんが居てくれるお陰で家事がだいぶ楽になったわ。」「それに、あなたが作る料理はどれも絶品で凄く美味しいからね。今日も頼りにしてるわよ!」「ありがとうございます、カルラさん。」カルラとはカイルの母親の名前である。2人はお互い歳が近い為、普段カイル達が居ない間に家事を早く済ませ、暇になってから色んな話に花を咲かせていた。確かにリーナの料理は作るもの全て絶品であったが、彼女は料理の腕をずっと磨き続けていた。その理由は、いつかアガレフが帰ってきた時に沢山料理を食べてもらう為であった。自分の料理が好きだと言ってくれた夫に、沢山自分の料理を食べてもらう為に。しかし、その願いは叶わなかったが今はその料理の腕が誰かの為に活かされており、それがリーナにとっても嬉しい事だった。そしてカイル達がノーム王のところから帰ってきた。「ただいま帰りました、母上!」カイルが帰ってきた為、玄関から自分が帰ってきたと伝える声が母達の居る部屋まで伝わってきた。廊下からバタバタと多くの足音が聞こえてくる。他にも一緒に暮らしているミーナとエミル、フィナ、ライク、ニケルも一緒に帰ってきたからだ。そして帰った6人は母たちの居る部屋にゾロゾロと入ってきた。「皆んなおかえりー!ご飯もう少しで出来るからね。」「ありがとうございます、カルラさん。私も手伝います。」「私もやります!」フィナが言うとエミルも便乗し、カルラ達の手伝いをしようとした。「ありがとうね。助かるわ、フィナさんにエミルちゃん。2人にはちょっとこのスープの味を見て良い感じに整えて欲しいの。」カルラは殆ど作っていたスープの最終調整をを2人に任せた。フィナとエミルは2人とも料理が得意である為、時間がある時などはカルラとリーナに手伝いを頼まれる事があった。しかし、
2人が見た通り、確かにヒスイはグロードを助けた。それは紛れもなくその場で起きた事実である。しかし、2人の記憶による事実と今こうして実際に起きたヒスイが刺された結果が矛盾している。何があったのか?それはベリエルの持つ虚無の魔眼の力が原因である。[あらゆる事象に対する再試行]これはその時に起こった場面を無かった事にし、再度その場面をやり直す事が出来る力。例えるなら、(殴られた→やり直し→殴られる前に戻る。)といった様に、実際起きた事を無かった事にし、起きる前に戻る事が出来る。言うなれば、時を巻き戻す力に近い力である。この力は虚無の魔眼を見せた相手にのみ発揮する。先程2人に虚無の魔眼
そして次の日の朝。グロードとアガレフは月の遺跡へ向かう準備をしており、王宮の外には2人を見送る為に沢山の国民達が集まっていた。2人はリオ王国内では沢山の任務を受けていたが、国外に出て何かをするのは初めてであった。更にリオ王国内では英雄の様な存在である2人は皆んなの憧れであり、国民達全員から愛される存在であった。「グロード様!アガレフ様!お気を付けて!」「ああ。行って来る。」王宮の兵士に言われたグロードとアガレフは一礼し、王宮を出た。王宮を出た途端、国民達による大きな歓声が飛び交った。「お二人共ー!どうか無事に帰って下さい!」「月の遺跡の化け物なんかに負けないで!」「グロー
これは愛を知らずに育ってきた男の話。彼はこれまでの人生の中で物心ついた頃から愛という物に触れる事なく生きてきた。ネル・ナイトフォース。彼は5歳まで北の大国の中心都市部にある貴族の家で奴隷として過ごしてきた。物心付く前から奴隷として仕えていたが、そこでは人権というものが存在しなかった。「おい、ゴミ!さっさとこの食器片付けろよ!」その屋敷の主である中年男は仕える奴隷に向けて済んだ食器を片付ける様に命令した。「…はい。」命令を受けて出てきたのは当時4歳のネル・ナイトフォースだった。彼は肌着同然の薄い半袖の服にヨレヨレのズボンを履いていた見窄(みすぼ)らしい少年だった。身体を洗わせ
「ハァ、ハァ!カイル君、どこ行ったんだろ?」王宮へ走りながらカイルを探していたフィナ。死力を尽くして国を守った人が突然姿を消し、その安否が気になり気付いたら王宮の方へ走っていた。王宮までの距離は長く、近づくにつれ擬似・ブラックホールによる被害が大きくなっている。その悲惨な光景を見る度に胸が締め付けられる。「(ここの花屋さん、いつも店の人がニコニコしながら花の事教えてくれてたな…部屋に赤い椿を飾ったな。…あっちのパン屋さんではよく巡回してた時、こっそり買って食べてたな。)」そう考えてると悲しくなり、更に目から涙が溢れていく。何で、こんな事になったんだろ…幸せだった筈なのに。そし







