LOGINこの世界には悪魔がいました。
悪魔は夜にしか活動出来ないが生まれつき力が強く、人の心臓または目を好んで毎晩人を襲いました。 そんなある日1人の男が悪魔をこらしめました。 その男はこの国の王子様…否 この世で一番、悪魔に近くそして心無い男だった。 「…!はぁ…はぁ……何、今の夢。」 確か小さい頃読んでた絵本の内容だったけどすごく怖かったような… 「おはよぅ…」 「おはようミーナ。もう体大丈夫なの?」 「体?そういえば私、気絶してしまったんだね。全然覚えてないな」 昨日玄関前で気絶してからミーナの母親はミーナを家の中まで運びベットに寝かせたのだった。 一度目を覚ましたが疲れがたまっていたのかすぐに寝てしまったらしい。 ミーナは朝起きてから学校に行く準備をし、朝ごはんを食べ家を出た。 「行ってきます…」 「行ってらっしゃい。…どうしたのミーナ?元気ないわよ?」 「そ、そんなことないよ!じゃ、行ってきまーす!」 ミーナは昨日殺された友達は絶対来ないものだと思うと不安で仕方なかった。 まだ17歳のミーナには辛くそして悲しい現実だった。 学校に着いてクラスに行っても案の定友達の席には誰も座っていない。 やっぱりあの時… キーンコーンカーンコーン 「はーい、じゃあ席につきなさーい」 私がカバンから教科書を机に移してるとタイミングよくチャイムがなりそれと同時に担任の先生が入ってくる。 「はい、それでは朝のホームルームから始めたいと思うのですが…その前に皆さんに大切な話があります。」 すると先生の顔がいかにも深刻そうな顔に変わった。 きっと友達の事だろうなぁ。 「…実は今日3人ほど学校に来ていませんが昨夜その親御さんから行方不明の連絡がありました。」 やっぱりシェスカ達の事だったんだ… ミーナはそう思うととても心が痛かった。 別にミーナが悪いわけではないが自分だけが生き延びて学校に来てるのはおかしいと思ったからです。 「確かシェスカさん達はミーナとよく一緒にいましたが…何か心当たりはありますか?」 「……」 「ミーナ…さん?」 「実は…シェスカ達は…」 ガラッ ミーナが言おうとした時、急に教室の扉が開いた。 扉を開けた人物にミーナは目を疑った。 それは昨日目の前で殺されたはずの… 「…!シェスカ!エミー!イルミ!…え、どうして…」 「ごめんね、ミーナ。ちょっと寝坊しちゃった。」 「先生ごめんなさーい!」 「とりあえず遅刻届出したんで座っても大丈夫ですかー?」 「全く三人とも…後で職員室まで来なさいよ!」 「「「はーーい!」」」 そう言って三人は自分たちの席に座りカバンの中から教科書類を移し始めた。 ミーナは三人が生きていた事に嬉しくて泣いていた。 良かった…本当に良かった…。あの時死んだと思ってた…。 「はい、ミーナさん!何があったのか分かりませんが泣かないの! はい、ホームルームを始めるわよ!」 そう言って先生は5分ほどホームルームをして教室を出た。 ミーナは早く三人と喋りたくて終わってすぐに三人の机の近くまで来た。 「よかったぁー!三人とも無事で。シェスカ胸大丈夫なの?」 「え…ま、まぁ何とか大丈夫だったみたい。」 「エミーもイルミも大丈夫?」 「わ、私はほら。そんなすぐ死ぬ奴じゃないでしょ?あははは」 「運が良かったっていうか…何ていうんだろ?…まあそんな事いいじゃない!」 「なんかみんなよそよそしぃ!ねえねえ、今日もいつものとこに遊びにいこーよ!」 「遊ぶ?…あー、いつものとこね!分かったわ!」 「やったぁー!あ、その前にちょっと私トイレ行ってくるー!」 ミーナがトイレに行くと同時にチャイムがなり、ミーナはヤバイと言いながら走ってトイレに行った。 チャイムがなったことでクラスの生徒達がミーナ以外全員戻ってきた。 そして最初の授業の先生が入ってきて主席名簿を取り出した。 「ミーナはトイレか。しょうがない…。じゃああいつ抜きで出席確認をするから返事しろよ。」 先生はそれぞれの名前を読み始め、名前を呼ばれた生徒はそれに対して返事をする。 「……ニヤァ…」 「…そろそろだな。」 「お腹すいたぁー…」 授業が始まってからすぐに、シェスカとエミーとイルミが急に席を立ったので生徒達と先生は三人に注目した。 「おい、お前ら何立ってんだ!早く座らんか!」 「……」 「……」 「…ニヤァ」 嬉しい。 あの三人が生きて学校に戻ってきてくれて本当に良かった。 これでまたいつものように楽しく学校で… ミーナはお手洗いを済ませて手を洗い鼻歌を歌いながら教室に戻った。 教室につくと授業中のはずなのにドアが開いてた。 あれ?なんで開いてるんだろ? …まっ、いっか! 「先生!遅れてすいませんでし…」 「きゃぁぁあ!!!」 そこにはミーナがトイレに行ってた3分くらいの間人の血で染まっていた。 「みんな…みんな!何があったの!ねぇ?…先生!」 みんなに声をかけるが誰1人返事を返さない。 生徒達のほとんどは体の原型をとどめられないくらい八つ裂きにされていて、先生に関しては目と心臓部分を抜き取られていた。 「目と心臓が…ない……うっ…ハァ、ハァ…」 先生の死体を見てミーナは思い出した。 こんな殺し方普通の人間には出来ない。それにシェスカ達だけいないみたい。これは… ピーンポーンパーンポーン すると突然学校のアナウンスがなった。 「全校生徒の皆さんに伝えます! 今すぐ学校から逃げてくださ…グシャ!」 アナウンスの人は言い終わる直前に何かあったようだ。 するとこの階の端から叫び声が聞こえる。 「きゃぁぁ!」「助けてー!」 グシャァ!!! 「ひっ…ひっ…」 ミーナは今度は自分の番だと思い、学校の外を目指して走った。 (殺される!逃げなきゃ殺される!) 「どこ行くの?ミーナ?」 するとその前にはさっき教室にいなかったシェスカが手を後ろに組んで立っていた。 「…シェスカ……」 「どこ行くのミーナ?」 シェスカは腕を後ろに組んだまま笑顔でこっちに近づいてくる。 まるで腕を隠しているようだった。 「どうしたの、ミーナ?なんでそんなに汗かいてるの?」 「…あなた、誰?」 「え、シェスカよ?急にどうしたの?」 「違う!あなた…いや、他の二人も…あなた達一体、何者なの?」 「……」 「答えて!本物のシェスカは…エミーやイルミはどこ行ったの!?ねぇ!」 ミーナの問に答えようとしないシェスカ。 するとシェスカの後ろから声が聞こえた。 「あー、おいしかった…ジュルッ…」 「お腹もだいぶ落ち着いたって感じ♪」 「エミー!イルミ!…その手はもしかして…」 後ろから現れたエミーとイルミの手は人の血で真っ赤になっていて、エミーは血の付いた手をおいしそうに舐めていた。 「あれ、あんなところに餌(人間)が残ってるー!」 「ほんとだ!シェスカ、食べてもいいよね?」 するとさっきまで黙っていたシェスカはニヤリと笑い、そして。 「…あぁ、いいでしょう…。血の一滴残さずにね。」 「シェスカ…エミー…イルミ…。やっぱりあなた達…」 「悪いわね、ミーナ。私たちはもう人ではないの。だから正直あなたの事なんてどうでもいいから…死んで?」 「うっ…うっ…」 ミーナは絶望のあまりその場に立ち崩れてしまった。 まさか自分の友達が悪魔になってしかも学校の人たちを殺しているのだから。 (悪魔は…死んだ人間にまで絶望を与えるの?…シェスカ達がそんな事思うわけない。) 「あははは!安心して!私が食べてあげるからぁ~!!」 エミーが最後に言うとエミーの体が昨日の化け物のような姿に変わりミーナを襲った。 グシャァァ!! 「!?ガァァぁぁああ!!」 「…あれ?私死んで…」 襲われたミーナは無傷で代わりに襲ってきた悪魔のエミーが胸を大剣で刺されていた。 「…何者だ、貴様!」 そこには昨日ミーナを助けた黒いローブの男が大剣を持って立っていた。 「あ、あなたは昨日の…」 「…こんな時間に活動する悪魔がいるとは…」 あの時は夜だったため顔がよく分からなかったが今はローブについてるフードを被っていて顔が見えなかった。 するとさっきまで胸を刺されてもがいてたエミーは次第に胸の傷が再生して立ち上がり、ローブの男を睨みつけた。 「殺してやる!殺して…コロシテ…ヤル!」 するとエミーの身体はさっきよりも化け物みたいな姿に変わっていった。 その姿は例えるなら悪魔というより二本足で立っている狼のようだった。 そしてエミーは一瞬で男に迫り、爪を連続で繰り出した。 しかし、ローブの男はその攻撃を息一つ切らすことなく全て大剣で防いだ。 「エグッテヤル!…エグル…エグル!!」 エミーが激しく攻撃してもローブの男にダメージを与えることはできず、これ以上やってもラチがあかないローブの男はエミーを大剣で吹き飛ばした。 吹き飛ばしたその隙に左手で空間に穴を空けて、ローブの男はその穴をくぐり抜けその場から消えた。 「…ドコダ…ドコイッタ…。出テ来イ!…エグッテヤr…ガハァ!」 突然エミーの背後から現れたローブの男は隙だらけのエミーの背後を大剣で縦に切りつけ、エミーは血を吐きながらその場に倒れてしまった。 「エミーーー!!!」 悪魔の姿になっても友達だったエミーを2度も殺される所をミーナは涙をボロボロ流しながらそれを見るしか出来なかった。 「頭の悪い悪魔はやり易い。…次はどっちだ…かかってこい。」 「てめぇ!エミーをよくもっ!」 「やめな、イルミ。仲間を殺されて悲しむなど愚かな人間のやることだ。」 今度はイルミが姿を変えようとしていたが、シェスカはそれを止める。 そしてシェスカはローブの男に質問した。 「貴様は何者だ?その魔力からして人間ではないのは確かだが悪魔でもないな。」 するとローブの男は大剣を下ろすと被っていたフードを脱ぎながら答える。 「…お前らのように人を喰らう存在がいれば、その悪魔を喰らう存在もいる。」 「悪魔を…喰らう存在?」 フードを脱ぐと男の髪と瞳は炎のように真っ赤に染まっていた。 「俺は貴様ら悪魔を食い殺すために自ら悪魔と取引し、力を手に入れた。名はない。だが周りは俺をこう呼ぶ。」 「紅の悪魔祓い、グレン。」 そう言うとグレンと名乗った男は着ていたローブを脱ぎ捨て、大剣を構えた。 「紅の…悪魔祓い…なるほど、通りでエミーを一瞬で殺せたのか。しかし悪魔祓いが本当にいるとはな。」 (しかし、悪魔祓いの奴がなぜここに?それになぜ他の生徒は助けずにミーナだけを助けるんだ?) シェスカが考えているとグレンは大剣を構えて迫ってきた。 それをイルミが爪で防御し大剣を止めた。 「いきなりシェスカはないでしょ?悪魔祓い…さん!!」 イルミは最後の語尾だけ強く言い、大剣をはじいた。 「あははは!エミーを殺したからって調子乗らないでね!今からあなたを綺麗に串刺しにしてやるから!」 するとイルミの両手の爪はゴムのように伸び縮みし、伸びた爪でグレンを襲う。 グレンはローブを脱いだのか動きが早くなり、余裕の表情で大剣を使って防ぐ。 「余裕ぶってんのも今の内よ!ほらっ!」 イルミが言うと一本の爪が大剣を滑るようにかわし、そのままグレンの腕をかすった。 他の爪も同様、次第に大剣を滑るようにかわしてかすり出す。 「ほらほらぁ~!どんどん当たってきてるわよぉ?疲れちゃったの?」 グレンはまるで軟体動物の触手みたいにグニャグニャする爪に苦戦していた。 グレンは左横に空間の穴を空けて再びイルミの背後を狙おうとした。 だが、動きを読まれていたのかイルミは伸びた爪を引っ張ってきて防ぐ。 「残ねぇ~ん!さっきの見て思ったんだけどあんた相手の背後狙うの好きだねぇ?」 イルミは伸び縮みを利用して横に爪を振りきった。 グレンはとっさに空間移動したが右腕だけ少し切り傷が入り、そこから血が流れていた。 「あらら~、痛そうね。てかさ、いい加減本気出したら?」 「…」 「とぼけないで。悪魔と取引きしたのにそんな弱いわけないでしょ?それとも本気の出し方を知らないの?」 イルミが言うとグレンは一回ため息をつき、そして。 「…いいだろう。少しだけ本気を出す。だが、これだけは言っておく…」 そしてグレンの立ってるところから黒い魔法陣が現れるとそこから黒い炎が発生し、その炎はグレンの身体を纏う。 「…どうなっても知らないからな…。」 グレンは黒炎を大剣に纏い、再び構えた。 「へー、さっきよりも魔力は上がったみたいね。けど炎じゃ私を倒せないわよ!」 イルミは爪を伸ばしてグレンを襲い、グレンはさっきと同じようにそれを大剣で防ごうとした。 「あははは!あなた学習能力ないわね!八つ裂きにされなさ…」 「イルミ!離れなさい!」 「えっ…きゃぁあああ!!」 イルミの爪は大剣に触れるとそこから黒炎が勢いよく燃え移り、イルミの身体を燃やした。 そしてグレンは空間移動を使ってイルミの近くまで移動し、黒炎を纏った大剣で縦に切りつけた。 グシャァッ!! 「ガァッ…!ガッ…」 「悪魔の炎は相手がチリになるまで燃え続ける漆黒の炎。お前が消えるまで炎は消えない。…これが悪魔と取引して手に入れた力だ。」 「ガァッ…ァ…ァ………」 イルミは次第に声が聞こえなくなり、そのまま黒炎によってチリになって消えてしまった。 「イル…ミ…うぐっ…」 イルミまで目の前で殺されてミーナは言葉が出なかった。 「最後はお前か…銀髪の女……いや、悪魔だな。」 グレンは大剣でシェスカを指す。 シェスカは黒炎によってチリとなったイルミを見ても表情を変えることはなく、寧ろ口角を吊り上げて不敵に笑った。 そして身体を化け物に変異し視線をグレンに向けて言った。 「あなた何か勘違いしてない?確かにあなたは強いわ、人間にしてはね。けどあなたは私には勝てない。そう、そんな悪魔の力を借りた程度じゃワタシニハ…カナワ…ナイ!…グルルルッ!」 シェスカは言葉を発するに連れて理性を保てずに獣のような唸り声を出していき、グレンを獲物と認識したかのように睨んだ。 そして一気に襲いかかり、右手の爪を上から思い切りグレンに振り下ろした。 グレンは空間移動の魔法で一瞬でその場からいなくなると一瞬でシェスカの背後に現れて横に斬る構えをとった。 しかし、シェスカはそれに気づいてたらしくすぐに判断して爪で大剣を防いだ。 そして剣ごとグレンを後方に押し飛ばした。 「オナジ…マホウ…キカナイ。グルルルッ…」 飛ばされたグレンは廊下の一番端の壁に背中から直撃し、血を吐いて片膝をついた。 「ガッ…ぐ…っぺっ!…」 「マ…ダ…マ…ダ…」 グレンが立ち上がろうとした直後、目の前には爪を引っ込めた状態で接近してきたシェスカは手を拳に変え、グレンを殴りまくった。 グレンは避けることができず只々その攻撃を受けていた。 …いや、この時は受けているように見えた。 容赦なく殴り続けるシェスカ。 通常、悪魔に1発でも殴られた人間は全身の骨が粉砕し再起不能の状態になるほど筋力が特化している。 グレンはその何倍も殴られた。 普通の人間ならまず生きることはできない。 ひとしきり殴ったシェスカは悪魔の姿から人間の姿に戻り、理性の失ってた声は落ち着きを取り戻した。 「まあ、こんだけ殴ったら普通死ぬわね。…さて、そろそろ食べさせてもらうわよ?ミーナ?」 ジュルリとヨダレの音を立て、爪を伸ばしてミーナに近づく。 ミーナは恐怖で怯え立ち上がることができず腰をつけたまま後ずさりしていく。 「あーらあら。人間って本当に愚かね。さっさと殺されたら楽になれるのにね。こいつみたいにさっさと楽になれば…」 シェスカが後ろにいたグレンを指差そうとした時、その指は急に捕まれそのまま関節の曲がらない方向にねじ曲げられた。 「ガァァァァ!!っ…なんで倒れてないの!?普通の人間なら死んでるはず…」 「普通の人間なら…だろ?」 シェスカの指をねじ曲げたのはまるでさっきのダメージを受けてないかのように涼しい顔をしたグレン。 ねじ曲げて取ったシェスカの指を黒炎を発生させてチリにした。 「なぜダメージを受けてないんだ…そんな顔してるな、クソ悪魔。」 「反(リバース)魔法ー、相手から受けた物理攻撃を吸収し自分の力に変換する。そして…」 拳を強く握りしめ、足を一歩前に出すとシェスカは反射的に一歩後ろに下がった。 「俺はお前と全力で戦ってない。」 そう言ってグレンは魔法を纏っていない右拳をシェスカの腹にぶち込んだ。 反魔法によってダメージを吸収したことによって魔法を纏ってないのにも関わらず拳から衝撃が発生しシェスカの腹はえぐれ内臓が飛び散る。 あまりの痛みにシェスカは意図せずに悪魔に変異してもがき苦しんだ。 「がっ…ガァァァァァァア!!!ああ…ァあ…」 悪魔か人間かどちらかわからない状態でもがき苦しむシェスカ。 そんなシェスカをグレンは一旦その辺に置いていた大剣を再び持って剣先でシェスカを指した。 「お前に人間として生きる道はない。とっとと死にやがれ」 剣を振り上げてシェスカの息の根を止めようとするグレン。 「やめてーー!!!」 剣を振り下ろそうとした瞬間、ミーナの叫び声によって剣の動きが止まる。 「邪魔するな、女。こいつは悪魔、殺さなければこっちが殺される。」 「分かってる…分かってるわよ、そんなこと!分かってる…。でも…その悪魔…シェスカは私の友達。どんな姿になっても…友達…友達だから!だから…シェスカを…助け…」 ミーナは涙を流しながらのため呼吸が下手になり、そうながらも友達を守るために必死で阻止しようと声を振り絞った。 しかし、グレンは表情を一切変えずに 「昨日の夜言ったはずだ。昨日の事、友達の事は忘れた方がいいと。それにこいつら悪魔は人間の心臓を食うことで新たな悪魔を生み出す。このシェスカも悪魔に身体を乗っ取られただけだ。残念だがこいつは殺す。」 そして剣を振り下ろし、シェスカからは悪魔特有の黒い血しぶきが飛び散った。 それを見てミーナは狂ったように発狂し、その場に崩れ落ちた。 グレンは大剣をポケットのような空間にしまい込みミーナに近づくとしゃがんで彼女の頭をさすりながら彼女の目を見て言った。 「悪魔は残酷だ。人間の心臓を奪って殺し、殺した死体に新たな悪魔を誕生させて他の人間の心臓を奪うという負の連鎖を繰り返す生物だ。…まずはこの学校を殺された死体ごと燃やさなければならない。出るぞ。」 グレンはミーナの頭を触りながら転移魔法で外に移動した。 外に転移したグレンとミーナは学校の入り口の前まで移動した。 グレンはミーナに側から離れろと言うとミーナはグレンから20メートルくらいまで離れ、離れたのを確認すると両手を入り口前の地面に置いた。 「ー黒炎よ、負の魂を焼き払えー」 グレンが魔法を唱えると学校を囲むような黒い魔法陣が発動し、学校の校舎は黒炎によって黒く燃え始めた。 その黒炎は普通の炎と違い、辺りに燃え広がることはなくその校舎の位置だけを燃やしていく。 「ギャァァァァ…」 殺された人間の何人かは悪魔になって復活したが、学校ごと燃やしたため中で悪魔の声らしきものが聞こえてきた。 グレンが学校を燃やしたのは一見残酷だが殺された人間が悪魔になって他の人たちを襲わせないためである。 燃えていく学校を見ながらグレンはミーナに言った。 「お前はこれを見て辛いか?」 「…辛い…でも、仕方ないよね。もし学校を燃やさなければ大量の悪魔ができちゃうもんね…」 「その通りだ。辛いと思うが今起きたこの現実を決して忘れるな。」 「…うん。」 ミーナの精神状態はもうまともで入れる状態ではなくグレンの言ってることをぼーっとしながら聞き流すようにコクっと頷いた。ドグマに言われた通り朝の4時半に起きたグレンは、龍技の真髄の修行をする為にドグマの後ろに付いて歩いていた。早朝に起こされたにも関わらずグレンは眠そうな素振り1つ見せなかった。「初日で眠くはないのか?」「ああ。普段からあまり睡眠を取らない方だ。昨日はゆっくり出来た。」グレンは旅をしてる時もそうであるが、いつ自分の身に危険が起きても対処出来る様に熟睡は基本的にしない。その為、グレンにとっては明朝4時半と早い時間に起こされても睡眠時間的には十分であった。「…そうか。この程度なら生意気な口も普通に叩けるのか。よかろう、遠慮はいらんという事だな。」ドグマは余裕そうなグレンに対し、そう脅しをかける。「(そういえば、昔アガレフに修行を付けてもらう時も同じ様な事を言われたな。)」……思い出すだけでゾッとし、血の気が引いていくのが分かる。あの時は毎日失神するまでボコボコにされていたなぁ。アガレフの修行は本当にキツかった。「よし、着いたぞ。」真っ暗だった為、到着するまでどこを歩いているのか分からなかったが数十分後、ドグマが連れてきた場所は竜の遺跡にある川の上流の方だった。「川で修行するのか?」「そうだな。修行と言えば修行かな。足の裾を捲(まく)れ。今から川で魚を捕まえる。」そしてドグマはズボンの裾を膝上まで捲り上げると片足ずつ川に入っていく。そして川の真ん中辺りまで行くと水面の上で手掴みする様な構えをした。…バシャッ!素早く水面に手を突っ込み一瞬で掬(すく)い上げる。手のひらからはみ出そうな大きさの魚がドグマの手に捉えられ、捉えた魚を竹と藁で編んだ肩掛けの魚籠に入れる。そして再び魚を捕まえる構えに戻った。「…何してる?お前もやらんか。」「あ、ああ。」グレンもドグマと同じ様にズボンを膝上まで捲り上げて川に入ろうと右足を水につける。「うっ!……」あまりの冷たさに声が出てしまうグレン。朝方の気温の低い山奥の川の水。冷たくない訳が無い。「冷たいだろ?因みに魔法は一切使うなよ。修行にならんからな。」「…いや、魔法使わないと見えねえよ。」只でさえ冷た過ぎる水に慣れない中、真っ暗な時間帯で水中の魚が見えない。しかも道具は一切使わず難易度の高い手掴み漁。目を凝らして水面を見るが当然見える訳が無い。グレンは困惑してる中、隣でドグマは流れ
時は遡る事3日前。この日はカイル、エミル、ミーナが東の大国に到着したばかりの日であった。しかし、ここは北の大国と東の大国よりも更に北東部の奥にある場所。そこは一般の人が立ち入ると必ず道に迷うとされる竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)]と呼ばれる森林があった。その森林の中にある地面は深い裂け目や溝が幾筋も走り、獣道や細い道がそれに沿って複雑に分岐している。道はまるで生き物のように折れ曲がり、進んだはずの者を同じ場所へ戻し、方角の感覚を狂わせる。異常な磁場がコンパスの指針も狂わせる為、人の五感や魔力の流れを読めない人が立ち入れば一瞬で迷路へと変わる場所。この森林の中に1人の男が歩いていた。彼の名前は紅の悪魔祓い(デビルブレイカー)グレン。彼はレミールでミーナ達と合流したのだが、そこの国民に国を守る様に提案される。しかし、それを拒否したグレンは国民に危害を加えられた挙句、抵抗すると悪魔と言われて非難された。そしてグレンは自分のせいでミーナに危害が加わると考え、自ら1人になる道を選んだのだ。では何故彼が今この森林に居るのか?(おい、いい加減にしろ!いつまで歩き続けるつもりだ?もうかれこれ3日は歩いてるぞ?)グレンの中に居る悪魔、リフェル。本名強欲のマモンが話し掛ける。グレンはこの竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)に立ち入ってからかれこれ3日は経っていたのだ。「……この森、まるで生きてるみたいに場所が変化してる。ずっと同じところをグルグル回らされているみたいだ。」木々に囲まれて複雑に分岐した細い道を辿っていくも、いつの間にか元来た道に戻っている。更に元来た道をよく確認すると木々の形や生え方、地面の裂け目の形が少し違っていた。(何回この道来るんだよ!もう100回くらいこの光景見てるぞ!)「……いや、違う。よく見てみろ。この地面と木の並び方。少し違って見えないか?」(は?そんなもん覚えてる訳ないだろ!)「最初来た時はこの地面の裂け目は3本だった。だが今は2本。木も1本1本捻れてたのが真っ直ぐになってる。」(…長い事同じ光景を見て疲れてんのか?…いや、待てよ…グレン、何が言いたい?)何かに気付いたリフェルはグレンの考えを聞く事にした。「多分だが俺達が前に進めば進む程、木や道の形が変化して最初来た時と同じ光景を見せられる。けど、地面
悪魔に襲撃されたクレーアタウン。 アスモディウス達との戦闘により、平和だった町の殆どの建物は半壊している。 今すぐ普通の生活に戻れそうには無かった。 ゴウシが東の大国ノームに救助を要請したお陰で、大型のバスの様な魔力式四輪駆動車が到着。 その中から現れたのはノームの救護隊員達であった。 救護隊員達は生き残ったクレーアタウンの人達を誘導し、自分たちが乗ってきた四輪駆動車の中に乗せていく。 クレーアタウンが復興するまでは東の大国が責任を持って町の人達を守るつもりだった。 アガレフという父親を失ったミーナと、母親のリーナ。 リーナはまだ立ち直れず座りながら俯いていた。 無理もない。17年間、愛して待ち続けた夫が目の前で跡形もなく消えたのだ。 簡単に立ち直れる筈が無い。 そんなリーナの側にミーナはつき、一緒に横に座っていた。 一方カイルはエミルの隣に立ち、目の前にはライク、ニケル、フィナが順に並んで2人と対面していた。 「改めてお久しぶりね、カイル君。」 フィナはカイルを見て挨拶した。 さっきはミーナの父親の件もあり、互いにそれどころでは無く再会の挨拶をする間が無かった。 「まさか、フィナさんが2人と一緒に居たなんて知りませんでした。」 カイルはシルフで別れた筈のフィナが、月の民である元盗賊のライクとニケル。2人と行動を共にしてる事に驚いていた。 するとフィナはエミルの方に視線を移す。 「あなたがライクとニケルが言ってたエミルさんね。私はフィナ・プロミネンス。宜しくね。」 「こちらこそです。エミル・ウォーマリンと言います。……ライクとニケルも、久しぶりね。」 少しよそよそしく2人に言うエミル。 一応、ティラーデザートでエミルはライク達に「裏切り者扱い」されて離れる事になった。 当然エミルも言われて当然だと思っている。 カイルと戦ってくれた時は必死だった事もあって、あまり気にしていなかった。 しかし今になって冷静になると、どんな顔をして2人を見れば良いのかエミルは分からなかった。 そんなエミルの悩みを掻き消すかのように2人は笑いながら。 「エミルも、元気そうで何よりだよ。」 「けっ!何辛気くせー顔してんだよ!」 ニケルは笑顔でそう言うと隣のライクは頭に手を組みな
場面は変わりミーナに会わせて欲しいと訴えるリーナを抱えながら、フィナはライク達の後を追っていた。フィナの"陽"の力は短距離で時間をコントロールして戦うのに向いている為、ライク達に比べると遠くへ移動するのはそれ程速くは無かった。それでもフィナの足は早く、時間のコントロールによってミーナ達とは10kmほど離れていたが5分くらいで近くの地点まで辿り着いていた。「リーナさん!もうすぐですからね!」「ありがとうございます!」フィナが走っていると、少し離れた場所で巨大な光の爆発が起こったのが見えた。「あの爆発は一体…」「…ミーナ。」その時は丁度、アスモディウスに魔力操作"極"の力によって光の爆発を起こした時だった。目の前で起きた光の爆発を見たフィナとリーナ。リーナはフィナの背中に抱えられたままミーナの無事を祈り、そのまま彼女達の戦場へと近づいていく。バタッ。ミーナはうつ伏せのまま地面に倒れ、持っていた刀が右手から離れる。刀の刀身が地面に当たると、当たった部分から刀身がバラバラに崩れていった。魔力操作"極"で刀に膨大な魔力を込めた事で、刀に大きな負担が掛かっていたからだ。ミーナのその姿を見たアスモディウスは先程まで息を切らして焦っていたが、この光景を見るや急にニヤケ始めた。「ミーナァァァ!!!」「ミーナちゃん!」エミルとカイルは走りながら倒れたミーナの方へと走る。しかし、魔力も使い果たし体力の限界だったエミルは早く走れない。「クソ!俺も身体が痛くて動けねぇ!」「まずい!あのままじゃ、あの子が殺されてしまう!」ライクとニケルも同様、雷神と風神の反動とカイルから受けたダメージにより今は動ける状態では無い。辛うじて生きながらえたアスモディウスがミーナの1番近くに居た事で、ミーナは絶対絶命のピンチに陥っていた。「…あれぇ?もしかして、動けない感じ?私、ヤバいと思ったけど。」するとアスモディウスは指をパチンと鳴らした。死者蘇生で蘇った死者達を操る合図だ。ミーナの消滅の光はアスモディウスのみを対象にしていた為、死者達はそのまま残っていた。「勝負では私に勝ってたのに、なんとまあ……残念だったね!小娘がぁ!戦場で気絶する方が悪いんだよ!恨むなら、自分の間抜けさを恨みなさい!」「おい、役立たずの屍(しかばね)共!この小娘をグチャグチャにし
するとベルゼバブが出てきた方とは逆の奥の方から別の足音が聞こえてくる。あの時は魔法が使えなかったから分からなかったけど、ただならぬ魔力を感じる。しかし、悪魔の様な不気味な魔力では無い。温かみのある優しい光の様な魔力。その魔力を持った人…人では無いが、ミーナとベルゼバブが居る方へ歩いてきた。「久しいのう。ミーナ。」その姿は以前ミーナと精神世界で対面した時に見せた、ミーナと全く同じ姿の状態のエル(ミカエル)が暗闇から現れた。「あなたはエル…」「な、何で!?何で君が居るの?大天使・ミカエル!」ベルゼバブはミーナの姿をしたミカエルを見て驚きを隠せなかった。普段無邪気に相手を挑発したりするベルゼバブが焦りを感じている。悪魔にとって天使という存在は、嫌悪を抱くと同時に恐怖の対象でもあった。ベルゼバブに視線を移すミカエル。「そなたはベルゼバブ。妾はこのミーナと共存してるのじゃ。…この姿じゃ、ややこしいな。」そう言うとミーナの姿をしたミカエルは変化していく。そしてミカエルは姿を見せた。白銀の長い髪を風に揺らし、透き通る青い瞳で静かに微笑む天使の翼の女性。白を基調とした和の装いには淡い金の煌めきが散り、腰紐と房飾りが上品に揺れる。大きな白い翼を広げたその姿は、神域の気配そのものだった。「それが本当のエルの姿…本当に天使みたいだ…」ミーナは天使の姿のミカエルに驚いていたが、その神々しい姿に見惚れいた。「天使みたいでは無い。妾は天使なのじゃ。」ニコリと微笑みながらミカエルは言った。柔らかいその表情と立ち姿はその名の通り天使と呼ぶに相応しく、一つ一つの言葉や所作が周囲をまるで温かく包み込むかの様である。その温もりは暗闇の精神世界が天国の様に思える程だ。「大天使がミーナの中に居たなんて…まさかとは思うけど、君の力を彼女に貸し与えてたりしないよね?」「妾の"恩恵"の力か?ええ、そうじゃ。妾の力を与えた事でミーナは力を使えるぞ。」何てこった…と言わんばかりの顔をしながらベルゼバブは手を頭に抱えた。何故ベルゼバブが頭を抱えてるのか分からないミーナ。「え、何か不都合な事でもあるの?」「不都合といえば、不都合かな…天使は僕達悪魔の魔力を凌駕するからね。何も対策しなければ、悪魔は天使によって一瞬で消されてしまう。」ベルゼバブの言う通り、一度
ミーナ達3人が戦っていたその頃。東の大国で元八握剣(やつかのつるぎ)であったギンジはミーナの母であるリーナを連れながら、他にも生き残ってるであろうクレーアタウンの市民を探していた。生き残っていた市民は結構居た為、全員助けに来てくれたギンジの後ろをゾロゾロと歩いて着いて行く。そんな中で思わぬ人物に出会った。その人はギンジにとってあまり会いたく無い人物。「ギンジ!お前、こっちに来てたのか!?」の太く低い声の主である彼の名前はゴウシ。八握剣(やつかのつるぎ)の土刃(どじん)と呼ばれる男である。見た目年齢が30代後半は過ぎてるであろうゴウシは、ベリーショートの茶髪に整えられた茶髭。八握剣のバンジョウやスイゲツと同じ侍の様な服装をしているが、体型はガタイが良いと言うよりも巨漢に近かった。丸太の様に太い腕に、武器は刀では無く斧を背中に担いでいた。「ゴウシ…そういえばスイゲツの奴が言ってたな。」ギンジはゴウシの事を嫌そうな目で見ながら東の大国ノームでスイゲツが言っていた事を思い出した。「はい!先程八握剣の土刃、ゴウシ様から連絡がありまして。最近東の近隣の国が悪魔に襲撃されているとの事です!」スイゲツがあの道場で報告した内容の発信源は確かゴウシであった。市民を助ける為の人手が足りない現状ではとても頼りになる存在であるが、国を出るつもりのギンジにとっては不都合でしか無かった。どうせこいつも八握剣(やつかのつるぎ)に戻れって言うに違いない。「お前が居てくれて良かった!ギンジ、俺もこの町の人達を助けたい!だから協力させてくれ!」しかし、ゴウシから出てきた発言はギンジの予想とは違っていた。「何だ、俺の事を引き留めようとしないのか?」「いや、今はそんな場合ではないだろう?そりゃ、お前には戻ってきて欲しいが、それよりも先に今はやるべき事があるだろ。」ゴウシは八握剣の中でも正義感が人一倍強く、真っ直ぐな性格であった。その正義感に加えて人々の為に今自分に何が出来るのか、常に考えて行動出来る人である。しかし、不可解な事が一つあった。「確かゴウシが居る場所はここよりも数km離れていた場所だ。どうやってここまで来た?」高速移動や転移魔法を使えないゴウシには一瞬でここまで来る移動手段が無かった筈だ。ーーどうやってここまで来た?こいつはこの町には居ないと思